2003年

 
 

イラク情勢に関する安保理公開会合における原口国連大使演説

平成15年3月26日

議長、

本日の会合を開催いただいたことに感謝します。

我が国は、これまで一貫して、イラクの大量破壊兵器の問題については、国際協調の下の平和的解決を目指し、イラクへの総理特使の派遣を含め、独自の外交努力を続けてきました。

大量破壊兵器は、大量かつ無差別に市民を殺害し、傷つける恐ろしい兵器です。私達は、このような非人道的な兵器が自国民を圧政の下に置く独裁者の手中にあることを、真剣に考えなければなりません。今日の国際社会において、大量破壊兵器の保有の有無は、うやむやに放置しておけるような問題ではないのです。

議長、

我が国は、イラク問題への対応にあたり、安保理が一致団結し、国際社会の平和と安全に対して責任を果たすべきであることを訴えてきました。最終的に安保理が意見の一致をはかれず、一致団結できなかったことは残念です。

しかしながら、我々は問題の解決をいつまでも先延ばしにすることは許されなかったのです。なぜなら、イラクは12年間にわたり、17本に及ぶ関連国連安保理決議に違反し続け、国際社会から何度も何度も平和的解決のための機会を与えられたにもかかわらず、その機会を一切活かそうとせずに安保理決議違反を繰り返し、決議1441によって与えられた最後の機会を逸し、最後の最後まで国際社会の真摯な努力に応えようとしませんでした。平和への鍵はイラクだけが握っていたことが明らかであったにもかかわらず、イラクは自ら平和への道を閉ざしてきました。イラクはその対応を根本的に変える姿勢を示さなかったのです。

いかなる場合においても、武力行使を支持することは容易な決断ではありません。戦闘なしに大量破壊兵器が廃棄されることが最善の策であることは、言うまでもありません。しかし、それが不可能な状況の下では、我が国としては、国際社会の責任ある一員として、この度の米国をはじめとする国々による行動を支持するとの結論に達しました。

議長、

我が国は、戦闘が一刻も早く、最小限の犠牲で終結し、国際社会に対するイラクの脅威が取り除かれることを心から望んでいます。その上で、イラクが一日も早く再建され、イラクの人々が自由で豊かな社会の中で平和裡に暮らして行けることが不可欠と考えます。そのために、国際社会が協力してイラクの復旧・復興のための支援を行っていくことが重要であり、我が国としても、積極的な対応を行ってまいります。

議長、

我が国は、イラクにおける武力行使に伴い、中東地域に将来への不安が高まっていることを重く受け止め、今こそ、この地域の平和と安定のため一層の努力を行っていくことが重要であると認識しています。

日本政府としては、かかる基本方針の下、既に合計約1億1253万ドルの難民支援を含む人道・周辺国支援の実施を決定しました。具体的には、(1)国際機関を通じた支援約503万ドル、(2)我が国NGOを通じた支援約330万ドル、(3)我が国の国際協力事業団(JICA)による救急医療体制整備支援、及び④国際平和協力法に基づく人的・物的協力に関する緊急人道支援を発表しました。また、(1)ヨルダンに対する1億ドルの無償資金協力及び(2)パレスチナに対する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を通じた約420万ドルの食糧援助を実施することとしました。

さらに、我が国としては、中東和平問題への取り組みを一層強化し、イスラム世界との対話と交流の増進などの取り組みを進めていきます。

今後、国際社会が将来に向けた作業に焦点を当て、安保理を含め国連が一致団結して、イラク及びその周辺地域の平和と安定の回復に取り組むことを我が国として強く希望します。また、国際社会が直面する種々の課題を解決していくために、国連がその期待される本来の機能を十分に発揮するよう、我が国としても積極的に貢献していきたいと考えます

有り難うございました。

   
ss="banner">外務省国際機関人事センター 法令外国語訳 外交政策Q&A  
(c) Permanent Mission of Japan to the United Nations
866 United Nations Plaza, New York, NY 10017
Tel: 212-223-4300

2003年

 
 

イラク情勢に関する安保理公開会合における原口国連大使演説

平成15年3月26日

議長、

本日の会合を開催いただいたことに感謝します。

我が国は、これまで一貫して、イラクの大量破壊兵器の問題については、国際協調の下の平和的解決を目指し、イラクへの総理特使の派遣を含め、独自の外交努力を続けてきました。

大量破壊兵器は、大量かつ無差別に市民を殺害し、傷つける恐ろしい兵器です。私達は、このような非人道的な兵器が自国民を圧政の下に置く独裁者の手中にあることを、真剣に考えなければなりません。今日の国際社会において、大量破壊兵器の保有の有無は、うやむやに放置しておけるような問題ではないのです。

議長、

我が国は、イラク問題への対応にあたり、安保理が一致団結し、国際社会の平和と安全に対して責任を果たすべきであることを訴えてきました。最終的に安保理が意見の一致をはかれず、一致団結できなかったことは残念です。

しかしながら、我々は問題の解決をいつまでも先延ばしにすることは許されなかったのです。なぜなら、イラクは12年間にわたり、17本に及ぶ関連国連安保理決議に違反し続け、国際社会から何度も何度も平和的解決のための機会を与えられたにもかかわらず、その機会を一切活かそうとせずに安保理決議違反を繰り返し、決議1441によって与えられた最後の機会を逸し、最後の最後まで国際社会の真摯な努力に応えようとしませんでした。平和への鍵はイラクだけが握っていたことが明らかであったにもかかわらず、イラクは自ら平和への道を閉ざしてきました。イラクはその対応を根本的に変える姿勢を示さなかったのです。

いかなる場合においても、武力行使を支持することは容易な決断ではありません。戦闘なしに大量破壊兵器が廃棄されることが最善の策であることは、言うまでもありません。しかし、それが不可能な状況の下では、我が国としては、国際社会の責任ある一員として、この度の米国をはじめとする国々による行動を支持するとの結論に達しました。

議長、

我が国は、戦闘が一刻も早く、最小限の犠牲で終結し、国際社会に対するイラクの脅威が取り除かれることを心から望んでいます。その上で、イラクが一日も早く再建され、イラクの人々が自由で豊かな社会の中で平和裡に暮らして行けることが不可欠と考えます。そのために、国際社会が協力してイラクの復旧・復興のための支援を行っていくことが重要であり、我が国としても、積極的な対応を行ってまいります。

議長、

我が国は、イラクにおける武力行使に伴い、中東地域に将来への不安が高まっていることを重く受け止め、今こそ、この地域の平和と安定のため一層の努力を行っていくことが重要であると認識しています。

日本政府としては、かかる基本方針の下、既に合計約1億1253万ドルの難民支援を含む人道・周辺国支援の実施を決定しました。具体的には、(1)国際機関を通じた支援約503万ドル、(2)我が国NGOを通じた支援約330万ドル、(3)我が国の国際協力事業団(JICA)による救急医療体制整備支援、及び④国際平和協力法に基づく人的・物的協力に関する緊急人道支援を発表しました。また、(1)ヨルダンに対する1億ドルの無償資金協力及び(2)パレスチナに対する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を通じた約420万ドルの食糧援助を実施することとしました。

さらに、我が国としては、中東和平問題への取り組みを一層強化し、イスラム世界との対話と交流の増進などの取り組みを進めていきます。

今後、国際社会が将来に向けた作業に焦点を当て、安保理を含め国連が一致団結して、イラク及びその周辺地域の平和と安定の回復に取り組むことを我が国として強く希望します。また、国際社会が直面する種々の課題を解決していくために、国連がその期待される本来の機能を十分に発揮するよう、我が国としても積極的に貢献していきたいと考えます

有り難うございました。