テロ行為による国際平和と安全に対する脅威に関する安保理公開討論における原口国連大使演説
平成15年2月20日
議長、
一月二十日に開催されたテロとの闘いに関する閣僚級会合のフォローアップとして、本日の会合を開催いただき感謝します。
議長、
民主主義においては、人々は自由に自分の意見を述べ、どうしても埋まらない主張の違いは投票を通じて平和的に調整されます。これに対し、テロリストは、弾丸を通じて暴力的に自己を主張の実現を目指します。テロリストは、自分達には民主主義的な機会が与えられておらず、テロによる以外に自己の主張を実現する道が閉ざされているとして自己正当化を主張しますが、テロ行為はいかなる状況においても決して正当化できるものではありません。テロ行為の犠牲者は、多くの場合、無辜の人々なのです。このような行為は拒否や非難だけでは、我々の民主主義的体制を守り、安全を確保することはできません。現在のテロ対策措置をより一層効果的に実施するための取り組みが急務であり、同時に、テロリズムを生む根本原因を分析し、これを是正することに真摯な努力を払うことも必要です。
議長、
過去において、テロリストの活動は、一般に特定の地域を対象としていましたが、グローバル化の進展及び科学技術の発達により、テロリストはグローバルな範囲においてより巨大な破壊力を有するようになりました。我々はそれを、九月十一日の攻撃、バリ島の爆弾事件等で目の当たりにしました。かかる国際テロリズムは、伝統的な抑止力では適切に対処することができません。そうしたテロリスト達が大量破壊武器を入手するようにでもなれば事態は極めて深刻です。国際テロリズムは二十一世紀の国際社会の平和と安全に対する新しい重大な脅威であり、国際社会は、結束し、固い決意をもって行動する必要があります。グローバルな協力のためのメカニズムや国際的な規範が強化されるべきです。
議長、
テロリズムに対するグローバルな闘いにおいて、以下の三つの目的が特に重要であると考えます。第一に、テロリスト集団に安住の地を与えないこと、第二に、テロリスト集団にテロ行為を実施する能力を与えないこと、第三に、テロリズムに対する脆弱性を克服することです。これらの目的を達成するため、国家間の協力関係及びネットワークが、単に軍事組織だけでなく、法執行機関、情報機関を含め、広範囲で形成されなければなりません。途上国においてテロ対処措置を強化するためのキャパシティー・ビルディングの取り組みも不可欠です。我々は、この目的のためCTCが行ってきた作業を評価しています。日本としては、アジア地域におけるこのような取り組みを特に重視しており、主にアジアを中心として、出入国管理、航空保安、税関協力、輸出管理、警察・法執行機関の協力、テロ資金対策の六分野においてセミナーの開催や途上国のための研修を行ってきました。平成十三年度は二百二十名、平成十四年度は約二百五十名の研修員をこれら六分野で受け入れてきています。これに加え、日本は、科学・生物・放射性物質・核(CBRN)テロ攻撃の際の各国の危機管理能力向上を強化するため、毎年三十名づつ、五年間で総計約百五十名の研修員の受け入れを計画しています。また、日本はアジア諸国の担当者を招き、テロ対策関連条約加入を奨励するためのセミナーの開催も計画しています。
議長、
国際社会のあらゆる構成員が積極的にグローバルなテロとの闘いに参加しなければなりません。我々は、関係国際機関、地域機関及び準地域機関の専門的知見を含め、利用可能な資源を動員する必要があります。この観点から、日本はCTCの第六作業計画及びこれら機関とのコンタクトを拡大し及び深化させる意とを強く承認します。グローバルな取り組みが、いかなる作業の重複もないように十分調整されるべきことはいうまでもあれません。来月開催される予定の国際機関、地域機関及び準地域機関の代表との間の特別会合は、CTC及び関係機関の双方にとって、テロとの闘いにおけるそれぞれの貢献を評価し、調整を改善することを追求する良い機会となるでしょう。
議長、
CTC十七月間の作業において決議一三七三の実施において大きな進展を見ました。このことについて、私はCTC議長であるジェレミー・グリーンストック大使及び他のビューロー・メンバーに対し、改めて感謝申し上げたいと思います。しかし、テロリズム、特に国際テロリズムとの闘いは始まったばかりであり、さらに取り組みを強化する必要があります。イノチェンシオ・アリアス大使の新たなリーターシップの下で、委員会がテロとの闘いにおける極めて有効な取り組みを継続するものと信じます。
議長、有り難うございました。
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