2002年

 
 

第57回国連総会における原口幸市国連代表部大使の演説(仮訳)(総会議題19「安保理報告」及び総会議題40「安保理改革」)

平成14年10月14日

議長、

まず始めに、安保理報告を紹介されたベリンガ・エボトゥ・カメルーン大使に感謝いたします。また、非常に良くまとまった安保理改革作業部会報告書を準備された韓国のハン・スンス前国連総会議長、インガルフソン・アイスランド大使、デュラン・ジャマイカ大使に対しても感謝申し上げます。

議長、

9月11日のテロ事件後一年間の安保理事会の活動内容を振り返って見て、安保理事会は国際の平和と安全の維持に概ねうまく対応してきたと考えます。その最も良い例は安保理非メンバー国が積極的に安保理事会の活動に協力したテロ対策です。また、アフガニスタン情勢についても、復興の分野は各ドナー国、治安の回復の分野については安保理メンバー・非メンバー双方の支援を得て、着実な成果を挙げていることを喜ばしく思います。また、中東情勢や国際刑事裁判所などの複雑な問題に安保理としての一体性を維持しながら対処したことを高く評価します。

議長、

近年、安保理事会の作業方法が改善されていることを歓迎します。特に今回提出された安保理報告が昨年の本件に関する総会審議で非メンバーが表明した批判に応える努力が反映されていることを喜ばしく思います。他方、今後も改善の余地がある事項として、二点を指摘したいと思います。

まず、安保理公開会合の頻繁な開催や、要員派遣国との会合など、非メンバー国の参加を改善するための努力が図られていることを歓迎します。しかし、本年初めに導入された要員派遣国と安保理との合同会合開催の新たなメカニズムはどのように運用されているのかまだ明確ではありません。この点について安保理事会に更なる改善を求めます。また、これに関連して、平和維持活動の効果的な実施のためには軍事要員、文民警察の派遣国のみならず、文民派遣国や重要な財政貢献国の関与が不可欠であるというのが日本政府の立場です。このような国々の適切な関与があって初めて国連平和維持活動はスムーズに実施できているということを常に念頭におくべきです。

二つめは安保理ミッションに関してです。ある地域情勢について国連がどのように関与するかを安保理事会が決めるにあたり、安保理ミッションの派遣が重要な役割を果たしていることは理解します。しかしながら、費用対効果の観点から、ミッション派遣のコスト、そして、どこにいつ、どのようなメンバー構成でミッションを派遣するのかの決定の基準を明確化する必要があると思います。例えば、何故安保理事会は3年続けてコソボにミッションを派遣することが必要と考えるのか、非メンバー国に対する明確な説明が必要であると思います。

議長、

安保理事会による自発的な作業手続きの改善に向けての努力は歓迎しますが、安保理メンバー間の議論が既存の安保理事会の規模と構成が維持されることを前提としたものとなっていることを残念に思います。国際社会の平和と安全に対する新たな挑戦が質的にも量的にも大きく変化している一方、国連が発足した50年以上前に責任を委託された5ヶ国が国際の平和と安定のための現在の体制を主導しています。それ故、安保理事会の正統性と実効性を確保し続ける上で果たして今のシステムが最も適当かという問題があります。先程述べたように過去一年の活動のみを振り返っても、例えばテロ対策で安保理事会は、国内治安や国際金融といった幅広い分野の深い知識と経験を必要とするようになってきていますし、安保理決議の履行を確保する上では、幅広い分野で多くの国連加盟国の協力を得ることが必要となってきています。

議長、

以上申し上げて、誤解されないよう、現在の5常任理事国が世界の平和と安定に貢献する意思と相応の能力を持つこと、そして良くその責任を果たしてきていることについて何ら疑問がないことを強調しなければなりません。しかし、新しい時代の下で安保理事会の正統性と実効性を更に強化するためには、P5と同様に世界の平和と安定のために貢献する意思と相応の能力を有する国を積極的に活用することが重要となっているのではないかという点を真剣に問わなければなりません。更に代表性の観点から、スイスと東チモールを加え国連加盟国数が191ヶ国となった現在、加盟国が118ヶ国であった約40年前の安保理事会をそのままの規模・構成に留め置くことがどうして可能なのでしょうか。もちろん効率性を確保することが重要です。しかし、実効性を損なわないことを確保するよう注意しつつ安保理事会を拡大することがますます必要になってきていると考えます。

議長、

このような認識はかなり多数の国連加盟国に共有されていると考えます。9月に行われた一般討論演説の際、80ヶ国の国の代表が安保理を改革することの必要性に言及したことは、その証左といえます。また、国連の強化というより大きな枠組みの中で見ても、安保理改革は引き続き国連にとっての最重要課題の一つであることを肝に銘じるべきです。アナン事務総長が先般の本件に関する報告書の中で述べられたとおり、「安保理改革なくして国連改革はない」のです。

議長、

当時の総会議長、ハン・スンス議長が第56回総会閉会ステートメントで述べられたとおり、昨年安保理改革の議論は「ほとんど変化がありません」でした。我が国は多くの国が感じているフラストレーションを共有しています。昨年は国連がテロとの戦いに専念する必要があったため、一昨年のミレニアムサミットで気運が高まった安保理改革の議論は盛り上がりませんでした。今こそ議論を再活性化していくことが重要です。安保理改革に関する議論が来年10年目を迎える中、我が国としては9月に小泉総理がこの総会議場で演説したように、安保理改革に関する取り組みが進展するよう、種々努力していく所存です。

安保理改革作業部会においては、包括的な改革パッケージ作成の最初の実質的なステップとして拡大後の安保理の議席数の問題等に焦点を絞った議論を行うべきと考えています。昨年の作業部会の経験を踏まえれば、既存のペーパーの議論を続けることでこれ以上の進展は望めません。この点に関しては、カヴァン議長以下今次総会のビューローの積極的な取り組みを期待したいと思います。

また、国連の内外で安保理改革に関する議論の機会を設け、政府関係者のみならず民間識者の広い参加も得つつ、様々な角度からこの問題を扱ってもらうことも、今後我々が議論を進める上での助けとなるのではないかと思います。なお、改革の議論を開始してから10年を終えても改革に向けた具体的な進展が見られない場合には、例えば政治レベルの代表者による会合を開催するなど、議論を進めるための何らかの手段を検討することも一案ではないかと考えます。

議長、

ミレニアム宣言で各国首脳は包括的な安保理改革にコミットしました。我々はその実現に向けて努力を続けるべきです。我が国が努力を続ける決意であることを改めて表明するとともに、安保理改革の実現のために各国と協力して取り組んでいきたいと考えます。

ありがとうございました。

   

議長、

まず始めに、安保理報告を紹介されたベリンガ・エボトゥ・カメルーン大使に感謝いたします。また、非常に良くまとまった安保理改革作業部会報告書を準備された韓国のハン・スンス前国連総会議長、インガルフソン・アイスランド大使、デュラン・ジャマイカ大使に対しても感謝申し上げます。

議長、

9月11日のテロ事件後一年間の安保理事会の活動内容を振り返って見て、安保理事会は国際の平和と安全の維持に概ねうまく対応してきたと考えます。その最も良い例は安保理非メンバー国が積極的に安保理事会の活動に協力したテロ対策です。また、アフガニスタン情勢についても、復興の分野は各ドナー国、治安の回復の分野については安保理メンバー・非メンバー双方の支援を得て、着実な成果を挙げていることを喜ばしく思います。また、中東情勢や国際刑事裁判所などの複雑な問題に安保理としての一体性を維持しながら対処したことを高く評価します。

議長、

近年、安保理事会の作業方法が改善されていることを歓迎します。特に今回提出された安保理報告が昨年の本件に関する総会審議で非メンバーが表明した批判に応える努力が反映されていることを喜ばしく思います。他方、今後も改善の余地がある事項として、二点を指摘したいと思います。

まず、安保理公開会合の頻繁な開催や、要員派遣国との会合など、非メンバー国の参加を改善するための努力が図られていることを歓迎します。しかし、本年初めに導入された要員派遣国と安保理との合同会合開催の新たなメカニズムはどのように運用されているのかまだ明確ではありません。この点について安保理事会に更なる改善を求めます。また、これに関連して、平和維持活動の効果的な実施のためには軍事要員、文民警察の派遣国のみならず、文民派遣国や重要な財政貢献国の関与が不可欠であるというのが日本政府の立場です。このような国々の適切な関与があって初めて国連平和維持活動はスムーズに実施できているということを常に念頭におくべきです。

二つめは安保理ミッションに関してです。ある地域情勢について国連がどのように関与するかを安保理事会が決めるにあたり、安保理ミッションの派遣が重要な役割を果たしていることは理解します。しかしながら、費用対効果の観点から、ミッション派遣のコスト、そして、どこにいつ、どのようなメンバー構成でミッションを派遣するのかの決定の基準を明確化する必要があると思います。例えば、何故安保理事会は3年続けてコソボにミッションを派遣することが必要と考えるのか、非メンバー国に対する明確な説明が必要であると思います。

議長、

安保理事会による自発的な作業手続きの改善に向けての努力は歓迎しますが、安保理メンバー間の議論が既存の安保理事会の規模と構成が維持されることを前提としたものとなっていることを残念に思います。国際社会の平和と安全に対する新たな挑戦が質的にも量的にも大きく変化している一方、国連が発足した50年以上前に責任を委託された5ヶ国が国際の平和と安定のための現在の体制を主導しています。それ故、安保理事会の正統性と実効性を確保し続ける上で果たして今のシステムが最も適当かという問題があります。先程述べたように過去一年の活動のみを振り返っても、例えばテロ対策で安保理事会は、国内治安や国際金融といった幅広い分野の深い知識と経験を必要とするようになってきていますし、安保理決議の履行を確保する上では、幅広い分野で多くの国連加盟国の協力を得ることが必要となってきています。

議長、

以上申し上げて、誤解されないよう、現在の5常任理事国が世界の平和と安定に貢献する意思と相応の能力を持つこと、そして良くその責任を果たしてきていることについて何ら疑問がないことを強調しなければなりません。しかし、新しい時代の下で安保理事会の正統性と実効性を更に強化するためには、P5と同様に世界の平和と安定のために貢献する意思と相応の能力を有する国を積極的に活用することが重要となっているのではないかという点を真剣に問わなければなりません。更に代表性の観点から、スイスと東チモールを加え国連加盟国数が191ヶ国となった現在、加盟国が118ヶ国であった約40年前の安保理事会をそのままの規模・構成に留め置くことがどうして可能なのでしょうか。もちろん効率性を確保することが重要です。しかし、実効性を損なわないことを確保するよう注意しつつ安保理事会を拡大することがますます必要になってきていると考えます。

議長、

このような認識はかなり多数の国連加盟国に共有されていると考えます。9月に行われた一般討論演説の際、80ヶ国の国の代表が安保理を改革することの必要性に言及したことは、その証左といえます。また、国連の強化というより大きな枠組みの中で見ても、安保理改革は引き続き国連にとっての最重要課題の一つであることを肝に銘じるべきです。アナン事務総長が先般の本件に関する報告書の中で述べられたとおり、「安保理改革なくして国連改革はない」のです。

議長、

当時の総会議長、ハン・スンス議長が第56回総会閉会ステートメントで述べられたとおり、昨年安保理改革の議論は「ほとんど変化がありません」でした。我が国は多くの国が感じているフラストレーションを共有しています。昨年は国連がテロとの戦いに専念する必要があったため、一昨年のミレニアムサミットで気運が高まった安保理改革の議論は盛り上がりませんでした。今こそ議論を再活性化していくことが重要です。安保理改革に関する議論が来年10年目を迎える中、我が国としては9月に小泉総理がこの総会議場で演説したように、安保理改革に関する取り組みが進展するよう、種々努力していく所存です。

安保理改革作業部会においては、包括的な改革パッケージ作成の最初の実質的なステップとして拡大後の安保理の議席数の問題等に焦点を絞った議論を行うべきと考えています。昨年の作業部会の経験を踏まえれば、既存のペーパーの議論を続けることでこれ以上の進展は望めません。この点に関しては、カヴァン議長以下今次総会のビューローの積極的な取り組みを期待したいと思います。

また、国連の内外で安保理改革に関する議論の機会を設け、政府関係者のみならず民間識者の広い参加も得つつ、様々な角度からこの問題を扱ってもらうことも、今後我々が議論を進める上での助けとなるのではないかと思います。なお、改革の議論を開始してから10年を終えても改革に向けた具体的な進展が見られない場合には、例えば政治レベルの代表者による会合を開催するなど、議論を進めるための何らかの手段を検討することも一案ではないかと考えます。

議長、

ミレニアム宣言で各国首脳は包括的な安保理改革にコミットしました。我々はその実現に向けて努力を続けるべきです。我が国が努力を続ける決意であることを改めて表明するとともに、安保理改革の実現のために各国と協力して取り組んでいきたいと考えます。

ありがとうございました。