2002年

 
 

第57回国連総会第2委員会一般討論原口大使演説

平成14年9月30日

議長、

最初に、マルコ・アントニオ・スアソ・ホンデュラス国連次席代表及び他の議長団員の就任につきお祝い申し上げます。

さて、本委員会が所掌する分野において、この一年間で大きな国際的取り組みがなされました。モントレーにおける開発資金国際会議やヨハネスブルグでの持続可能な開発に関する世界首脳会議では、開発分野でエポック・メーキングな歩を記すことができました。今後は、これら会議の成果をフォローアップしていくことが極めて重要です。

小泉総理は、ヨハネスブルグ・サミットにおいて野心的な新たなイニシアティブを打ち上げましたが、そこではグローバルな取り組みを目指した持続可能な開発のため、日本政府が取るべき具体的措置を定めており、低所得国の教育を支援するため今後5年間で2500億円(約20億ドル)以上の援助を行うことを表明しました。この関係で、ヨハネスブルグ・サミットで合意された実施計画において、国連総会が2005年からの10年を、「持続可能な開発のための教育の10年」として採択するよう勧告されていることが注目されます。

小泉総理が先の一般討論演説で述べた通り、我が国は、環境と開発の両立を図るためには、途上国の「自助努力」とこれを支える国際社会の「連携」が不可欠と考えます。「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)においても、グローバルパートナーシップが強調されています。このような考えに立脚して、本年のG8サミット前に、具体的なアフリカ支援計画である「日本とアフリカとの連帯」を我が国政府が発表し、川口大臣が8月にエティオピアを訪問した際、アフリカ開発のための政策演説を行い、アフリカと共に歩む日本の決意を表明しました。このような流れの中で、G8カナナスキス・サミットでは「G8アフリカ行動計画」が発表され、強化されたパートナーシップが基本原則として打ち出されたことは特筆に値します。我が国は来年10月に第3回アフリカ開発会議(TICADIII)を開催しますが、本会議が、以上のような取り組みを一層強化する上で何らかの手助けになることを切望します。

アフリカ開発の関係で、アフリカ米とアジア米を交配した新米種であるネリカ米について言及したいと思います。注目すべきは、在来種では生育までに120日から140日かかるのが、ネリカ米では90日から100日で生育することであり、更に、在来種が一束当たりの米粒の量が250であるのに対し、ネリカ米では400粒以上にもなることです。あるギニアの農民の報告によれば、1999年には、たった18キロの種子から800キロの米が収穫でき、2001年では150キロの種子から4000キロの収穫が上がったとのことであり、その収益のお陰でその農民は子どもたちにより良い教育を施すことができたとのことです。病気や乾燥に強く生産性が高いネリカ米は、食糧不足を軽減する上で大いに役立つ可能性をもっており、広く普及させるべきと考えます。現在、とりわけ西アフリカ諸国を中心に既に17カ国がコンソーシアムに参加し取り組みを進めています。このように新たな知恵を出してサクセス・ストーリーを創り出していくことが重要であり、我が国は97年より中心的ドナーとして支援しています。

次に、我々が開発を考える場合、後発開発途上国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国のおかれた特別の事情を考慮することが必要です。このうち後発開発途上国は、昨年の第3回国連LDC会議で採択された「ブラッセル行動計画」で向こう10年間の取り組みが策定され、小島嶼開発途上国については、既に国連の場で「バルバドス行動計画」が策定されており、これらの着実な実施が必要です。また、内陸開発途上国については、これまで通過輸送協力に関する専門家レベル会合が開かれるなど取り組みが見られますが、我が国としては、明年に開催が見込まれる内陸開発途上国閣僚会議に向けて、これら内陸国の諸課題について国際社会の理解が深められることを期待し、また引き続き積極的に協力を行う考えです。

開発援助の関係で、我が国は特に「南南協力」の重要性を強調したいと思います。途上国の中でも比較的発展段階の進んだ国は、まさに自分たちの経験やノウハウを他の途上国と共有することが、それら他の途上国にとってより効果的である場合が少なくないと考えます。我が国は、既に90年代初頭からこのような南南協力を支援するいわゆる三角協力を推進してきており、そのためにシンガポール、タイ、ブラジル、チリ、アルゼンティン、エジプト、テュニジア及びフィリピンとパートナーシップ・プログラムを取り交わし、専門家を第三国に派遣したり共同でセミナーを開催したり等、実績を重ねてきていることをご紹介したいと思います。

なお、我が国は、2001年度につきUNDPコア拠出総額の約15%に当たる9600万ドルを拠出していますが、これに加え450万ドルを南南協力に使用するようイヤマークを行っています。

南南協力に関し、「東アジア開発イニシアティブ」(IDEA)について一言言及したいと思います。これは、成長軌道に乗ってきた幾つかの東アジア諸国の開発事例を題材にODAが果たした役割や成果について意見交換を行うもので、ここでの議論がひいては他の地域での経済社会開発に役立てられることが期待されます。我が国は、本年1月に小泉総理が東南アジア諸国を訪問した際に表明した「共に歩み共に進む」との考えの下、本イニシアティブを打ち出し、8月に東京でIDEA閣僚会合を開催しました。このように、ある地域の教訓を他の地域に役立てることが今後一層重要となってくるものと考えます。

議長、

持続可能な開発を進める上で、地球環境保護に向けての全人類的取り組みがますます重要になってきています。喫緊の課題として、地球温暖化が挙げられます。我が国は、本年6月に地球温暖化防止に関する京都議定書を締結しました。本議定書が発効するにはまだ幾つかのAnnexI諸国の締結が必要であり、我が国は、本議定書が早期に発効し温室効果ガス削減のための具体的取り組みが開始されることを強く期待します。また、気候変動枠組条約でも規定されている通り、京都議定書上削減・抑制義務を負わない国々についても、地球温暖化対策のための努力を払うことが求められます。

92年のいわゆるリオ地球サミットの際に生まれた生物多様性条約や砂漠化対処条約についても一層効率的・効果的な成果をあげていくことが大切です。地球環境への対処は本質上全人類的取り組みが求められるものであり、すべての国が程度の差こそあれ同一の目標に向けて如何に実効的に成果を出していくかが鍵になります。我が国は、様々な国際約束が策定される中、真に遵守が高められるよう工夫し努力していく必要性を訴えたいと思います。

議長、

先般、本委員会の開会時に、議長より本委員会を一層効率的・合理的に運営する必要性について言及があったと承知しますが、日本代表団は同様の問題意識を共有します。効果的な運営が、委員会に対する更なる信頼に繋がり、ひいては国連の正当性を高めるものであると確信します。

有り難うございます。

   
員会一般討論原口大使演説

平成14年9月30日

議長、

最初に、マルコ・アントニオ・スアソ・ホンデュラス国連次席代表及び他の議長団員の就任につきお祝い申し上げます。

さて、本委員会が所掌する分野において、この一年間で大きな国際的取り組みがなされました。モントレーにおける開発資金国際会議やヨハネスブルグでの持続可能な開発に関する世界首脳会議では、開発分野でエポック・メーキングな歩を記すことができました。今後は、これら会議の成果をフォローアップしていくことが極めて重要です。

小泉総理は、ヨハネスブルグ・サミットにおいて野心的な新たなイニシアティブを打ち上げましたが、そこではグローバルな取り組みを目指した持続可能な開発のため、日本政府が取るべき具体的措置を定めており、低所得国の教育を支援するため今後5年間で2500億円(約20億ドル)以上の援助を行うことを表明しました。この関係で、ヨハネスブルグ・サミットで合意された実施計画において、国連総会が2005年からの10年を、「持続可能な開発のための教育の10年」として採択するよう勧告されていることが注目されます。

小泉総理が先の一般討論演説で述べた通り、我が国は、環境と開発の両立を図るためには、途上国の「自助努力」とこれを支える国際社会の「連携」が不可欠と考えます。「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)においても、グローバルパートナーシップが強調されています。このような考えに立脚して、本年のG8サミット前に、具体的なアフリカ支援計画である「日本とアフリカとの連帯」を我が国政府が発表し、川口大臣が8月にエティオピアを訪問した際、アフリカ開発のための政策演説を行い、アフリカと共に歩む日本の決意を表明しました。このような流れの中で、G8カナナスキス・サミットでは「G8アフリカ行動計画」が発表され、強化されたパートナーシップが基本原則として打ち出されたことは特筆に値します。我が国は来年10月に第3回アフリカ開発会議(TICADIII)を開催しますが、本会議が、以上のような取り組みを一層強化する上で何らかの手助けになることを切望します。

アフリカ開発の関係で、アフリカ米とアジア米を交配した新米種であるネリカ米について言及したいと思います。注目すべきは、在来種では生育までに120日から140日かかるのが、ネリカ米では90日から100日で生育することであり、更に、在来種が一束当たりの米粒の量が250であるのに対し、ネリカ米では400粒以上にもなることです。あるギニアの農民の報告によれば、1999年には、たった18キロの種子から800キロの米が収穫でき、2001年では150キロの種子から4000キロの収穫が上がったとのことであり、その収益のお陰でその農民は子どもたちにより良い教育を施すことができたとのことです。病気や乾燥に強く生産性が高いネリカ米は、食糧不足を軽減する上で大いに役立つ可能性をもっており、広く普及させるべきと考えます。現在、とりわけ西アフリカ諸国を中心に既に17カ国がコンソーシアムに参加し取り組みを進めています。このように新たな知恵を出してサクセス・ストーリーを創り出していくことが重要であり、我が国は97年より中心的ドナーとして支援しています。

次に、我々が開発を考える場合、後発開発途上国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国のおかれた特別の事情を考慮することが必要です。このうち後発開発途上国は、昨年の第3回国連LDC会議で採択された「ブラッセル行動計画」で向こう10年間の取り組みが策定され、小島嶼開発途上国については、既に国連の場で「バルバドス行動計画」が策定されており、これらの着実な実施が必要です。また、内陸開発途上国については、これまで通過輸送協力に関する専門家レベル会合が開かれるなど取り組みが見られますが、我が国としては、明年に開催が見込まれる内陸開発途上国閣僚会議に向けて、これら内陸国の諸課題について国際社会の理解が深められることを期待し、また引き続き積極的に協力を行う考えです。

開発援助の関係で、我が国は特に「南南協力」の重要性を強調したいと思います。途上国の中でも比較的発展段階の進んだ国は、まさに自分たちの経験やノウハウを他の途上国と共有することが、それら他の途上国にとってより効果的である場合が少なくないと考えます。我が国は、既に90年代初頭からこのような南南協力を支援するいわゆる三角協力を推進してきており、そのためにシンガポール、タイ、ブラジル、チリ、アルゼンティン、エジプト、テュニジア及びフィリピンとパートナーシップ・プログラムを取り交わし、専門家を第三国に派遣したり共同でセミナーを開催したり等、実績を重ねてきていることをご紹介したいと思います。

なお、我が国は、2001年度につきUNDPコア拠出総額の約15%に当たる9600万ドルを拠出していますが、これに加え450万ドルを南南協力に使用するようイヤマークを行っています。

南南協力に関し、「東アジア開発イニシアティブ」(IDEA)について一言言及したいと思います。これは、成長軌道に乗ってきた幾つかの東アジア諸国の開発事例を題材にODAが果たした役割や成果について意見交換を行うもので、ここでの議論がひいては他の地域での経済社会開発に役立てられることが期待されます。我が国は、本年1月に小泉総理が東南アジア諸国を訪問した際に表明した「共に歩み共に進む」との考えの下、本イニシアティブを打ち出し、8月に東京でIDEA閣僚会合を開催しました。このように、ある地域の教訓を他の地域に役立てることが今後一層重要となってくるものと考えます。

議長、

持続可能な開発を進める上で、地球環境保護に向けての全人類的取り組みがますます重要になってきています。喫緊の課題として、地球温暖化が挙げられます。我が国は、本年6月に地球温暖化防止に関する京都議定書を締結しました。本議定書が発効するにはまだ幾つかのAnnexI諸国の締結が必要であり、我が国は、本議定書が早期に発効し温室効果ガス削減のための具体的取り組みが開始されることを強く期待します。また、気候変動枠組条約でも規定されている通り、京都議定書上削減・抑制義務を負わない国々についても、地球温暖化対策のための努力を払うことが求められます。

92年のいわゆるリオ地球サミットの際に生まれた生物多様性条約や砂漠化対処条約についても一層効率的・効果的な成果をあげていくことが大切です。地球環境への対処は本質上全人類的取り組みが求められるものであり、すべての国が程度の差こそあれ同一の目標に向けて如何に実効的に成果を出していくかが鍵になります。我が国は、様々な国際約束が策定される中、真に遵守が高められるよう工夫し努力していく必要性を訴えたいと思います。

議長、

先般、本委員会の開会時に、議長より本委員会を一層効率的・合理的に運営する必要性について言及があったと承知しますが、日本代表団は同様の問題意識を共有します。効果的な運営が、委員会に対する更なる信頼に繋がり、ひいては国連の正当性を高めるものであると確信します。

有り難うございます。