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2006年

 
 

「Making Infrastructure Work for the Poor」研究成果発表会

 

2006年3月8日

8日(水)、ニューヨークにおいて日本・UNDPの共同研究「Making Infrastructure Work for the Poor」の研究成果の発表会が行われましたので概要をご報告致します。


1.今回の共同研究は2004年に日本とUNDPが合意し、以降2004年よりJICAも含めて研究をすすめてきたものです。基調講演には1998年ノーベル経済学賞受賞のアマルティア・セン教授をお迎えし、大島賢三国連大使、西本昌二UNDP開発政策局長、岩間敏之JICA英国事務所次長、セリム・ジャハンUNDP貧困グループ長代理、ルイス・グアシュ世界銀行上級顧問などがパネルディスカッションなどを行いました。


2.会場には予定していた150名を大幅に上回る170名を越える出席者があり、急遽、追加のイスを手配しましたが、それでも足らず一部は立ち見となってしまったほどでした。バングラデシュ、ネパール、モンゴル、タンザニア、ザンビア、ニカラグアなど約10名の国連大使(常駐代表)が出席、米・仏・伊・スウェーデン、蘭など各国代表部からの参加者が約70名、イエール大学浜田宏一教授、ニューヨーク大学ルービン教授を始めとする学識経験者とVoice of Americaなどプレス関係者が約10名、UNDP、UNFPA、WFP、UNICEF、UNHCR、DESA、UNCDF、UNOPS、国連大学、UNIFEMなどの国連機関からの出席者が約80名でした。


3.先進国で暮らしていると、日々の生活の中で私達は様々なインフラの上で快適な生活をしています。しかし、いざ途上国援助になるとそうしたインフラの重要性やその効用が忘れられがちです。今回の発表会には、MDGs達成のためにこうしたインフラ整備-特に小規模なコミュニティ・ベースのもの-の重要性を参加者に再認識してもらうねらいもありました。


4.発表会ではUNDPの西本政策局長の司会のもと、先ず大島国連大使より開会挨拶を述べ、MDGs達成のためにインフラ整備の重要性を特に「生活のためのインフラ」、「経済成長を通じて国の持続的発展を支えるインフラ」、「国や地域を越えた課題に貢献するインフラ」という3つの視点から述べました。


5.発表した研究成果の概要は次のとおりです(詳細はhttp://www.undp.org/povertyに掲載されている要約をご参照ください。(1)インフラは人々の生活の基盤であり、また国や地域の経済的な成長を通じて人々の生活の持続的向上に貢献するものである。しかし、インフラが必ずしも「経済成長」と「人々の生活の改善」のどちらにも貢献するわけではない。経済成長に貢献するようなインフラ整備が、人々の生活を良くするためには何が必要だろうか。(2)今回の調査はインフラの中でも、小規模なコミュニティー・ベースのインフラ-例えば灌漑用水路、排水路、井戸、簡易舗装道路・簡易橋、電源施設、学校施設・教室、診療施設、市場など-に焦点を当て、ザンビア、セネガル、バングラデシュ、タイの4つの国におけるプロジェクトの経験を検証した。これらケース・スタディではJICAのプロジェクトを中心に世銀やDfIDなど他のドナーが実施したものも含め、小規模インフラがひとびとの生活にどのように影響を及ぼしたかを検証し、インフラそのものだけではなく、いかにそれによりサービスを提供するか、つまり(特にコミュニティによる)ガバナンスをうまく機能させることにより、いかにインフラは貧困削減と人間の安全保障に貢献できるかの実証を試みており、これまでの概念に具体的な事例を加えたのが特徴的である。(3)小規模なコミュニティー・ベースのインフラを整備した結果、様々な効果が表れている。例えば、①地域住民の生計が向上し貧困削減に役立った(バングラデシュ)、②母と子の健康が改善された(ザンビア)、③教育を向上した(バングラデシュ)、④HIV/AIDS対策となった(タイ)、⑤女性のエンパワメントにつながった(セネガル)、⑥持続的な環境管理につながった(タイ)、⑦社会資本の形成・コミュニティ構築に役立った(セネガル)、⑧MDGs達成に貢献している(バングラデシュ)、などである。(4)これらケース・スタディを通じて、政策形成段階、ガバナンス、基本設計・維持管理などで必要な事項について提言をまとめた。


6.アマルティア・セン教授はUNDP・日本政府・JICAによるこの共同研究の成果は十分期待に沿うものであったと述べつつ、特にこの報告書の背景にある考え方に共鳴すると述べた上で次のとおり話されました。(1)なぜインフラが大事かを考える際、我々は「貧困とは何か」「なぜ貧困な人たちは貧困なままなのか」について考えなければならない。伝統的には「貧困」とは単に所得が少ないだけであると考えられてきたが、この見方はある意味で正しい。所得が不足していることこそ、多くの場合飢餓などの大きな原因だからである。(2)しかし、この報告書が指摘しているように第一に医療、教育、水供給など社会インフラの不足は個々人が高い所得を得たとしても、整備されることはない。第二に、低い所得そのものがそうした社会インフラの結果である。例えば、農家にとってマーケットにアクセスする農道が整備されていなければそれだけ収入は減るだろう。第三に、個々人の貧困とはその地域の平均収入やその家族の平均収入によってだけ決まるものではない。その地域の階層、ジェンダー、年齢やコミュニティの構成、経済的機会の有無などによっても変わってくる。こうした点もインフラの整備状況を反映している部分があり、この報告書のなかでも小規模インフラとジェンダーなどの関係として議論されている。(3)貧困とは様々な要因による結果である。インフラの不足はその大きな原因の一つである。この報告書の貧困の原因についての考察には深いものがあり、この報告書はどのようにそうした貧困を解決するのかについてその手段について検証しており、この報告書の成果を評価するには、そうした知的な背景についても理解する必要がある。(4)インフラの不足が貧困の主な原因であることを理解することと同時に、インフラを整備することがどのように変化を起こすかを理解することも重要である。公共計画やプログラムはワークするだろうか?そうした変化は短期で起こるのか、あるいは長期かかるのか?もし、それが短期なら社会的に協力を得ることは容易であろう。(5)この報告書が示しているのは、そうした努力が大きな変化を起こすということである。この報告は単に情報を提供してくれるだけではなく、貧困の原因についてよく分析された論文であり、インフラがどのように貢献したかを分析し、さらなる行動をよびかけるものになっている。(6)この報告書が目的としているのは「口笛を吹く」ようなことは止め、「考え」はじめることである。そしてそれが、大きな成果をもたらした。従って、自分はこの調査にかかわった人々、サポートをした人々、ケース・スタディを実施した人を祝福したい。


7.この後、パネルディスカッションがあり、岩間JICA英国事務所次長が「ひとびとの希望を叶えるインフラへ」というJICAパンフをもとに、インフラに関する5つの視点(再定義、現場に根ざした目標設定、総合的アプローチ、プロプアデザイン、インフラギャップの解消)を紹介し、具体例としてザンビアにおけるJICAの給水プロジェクトにおける各案件の連携、適切な実施組織(NGOを含む)の選定、成果が出るまでの協力の継続を具体的に紹介し、インフラが成果をあげるためには住民組織の育成を含めた息の長い協力が必要であると述べました。


8.質疑応答では、バングラデシュ常駐代表や浜田宏一イエール大学教授が今回の報告書を高く評価すると述べた他、ザンビア代表部員が「ザンビアにおける日本のこれまでの協力を感謝する、ケース・スタディとして取り上げられ光栄である」などのコメントがありました。


9.なお、UNDPホームページのトップページに本件発表会の様子が掲載されましたのでご覧ください(http://www.undp.org および http://www.undp.org/poverty)。また、別に本件研究のために開設されたサイトもご参考まで→http://www.devinfra.org/download.asp


セン教授のステートメント (Word ファイルのダウンロードはこちらから )

 

 

   

 

 

一イエール大学教授が今回の報告書を高く評価すると述べた他、ザンビア代表部員が「ザンビアにおける日本のこれまでの協力を感謝する、ケース・スタディとして取り上げられ光栄である」などのコメントがありました。


9.なお、UNDPホームページのトップページに本件発表会の様子が掲載されましたのでご覧ください(http://www.undp.org および http://www.undp.org/poverty)。また、別に本件研究のために開設されたサイトもご参考まで→http://www.devinfra.org/download.asp


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