2012年

 
 

国連第一委員会開催時のサイドイベント

「軍縮・不拡散の取組促進に向けた情報の効果的活用法」

2012年10月25日

 

10月25日、ニューヨークの国連本部において日本政府代表部は、国連軍縮部と共催で、軍縮・不拡散の取組を促進していくためにどのように情報を発信し活用していくかについて専門家を招いて議論するイベントを開催しました。

 

このイベントは、軍縮・不拡散教育に関する国連事務総長報告の発表から今年で10年目を迎えることから、軍縮及び不拡散問題を扱う国連第一委員会の開催期間に合わせて行ったものです。日本が重視してきている軍縮・不拡散教育が、実際の軍縮・不拡散に関する国際社会での議論や政策の形成に果たしうる役割や、情報の普及や世論の喚起のためにフェースブックやツイッターなどのいわゆるソーシャルメディアがどのように活用できるか等を議論し、軍縮・不拡散の交渉に携わる各国の政府関係者に考えを深めてもらおうという取組です。

 

イベントの冒頭、西田恒夫国連代表部大使が歓迎と開会の挨拶を行った後、パネリストとしてモントレー研究所のウィリアム・ポッター教授、国連軍縮部のジョン・エニス氏、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のマーク・ブロムレイ上席研究員、東京大学の岡田晃枝特任準教授の4名がパネリストとして登壇しました。

 

西田大使は冒頭、中東やアフリカにおける武器の不法取引や流出が深刻な問題となっている中、軍縮・不拡散教育を通じて、こうした問題に関心を強めた若者がどのようにして、実際に具体的な政策に関する議論に関与し、政府、学界、NGO、シンクタンク等がどのように意味のある議論を行っていくことができるかにつき問題提起をしました(西田大使の冒頭挨拶(英文)はこちら)。引き続きポッター教授が、軍縮・不拡散教育の重要性について講演しました。同教授は、この10年間にその重要性が増加する一方で、まだ各国における取り組みが不十分であるとの認識を示し、軍縮・不拡散分野での世論喚起を強化する必要性を指摘しました。次にエニス氏は、国連が行う軍縮不拡散分野の事業に関し、フェースブック等ソーシャルメディアが効果的に使われ始めている具体的な例を紹介しました。国連ではフェースブックを通じて広島・長崎の被爆者の証言を広く紹介し、「平和のための詩」を募るコンテストを行う等、ソーシャルメディアを活用した取組に力を入れています。また、ブロムレイ氏は、通常兵器の拡散が紛争地域の社会の中でいかに大きな脅威となっているかについて解説し、こうした武器の拡散・移転に関する具体的な情報が、政策担当者や学界等で、現在どのように活用されているかを照会しつつ、国際社会におけるさらなる取り組みの強化を訴えました。最後に東京大学の岡田特任準教授が、日本における軍縮・不拡散教育の実践例を紹介しながら、その重要性を訴えました。

 

この会合には、国連第一委員会に参加している各国政府関係者のほか、国連事務局関係者や軍縮・不拡散に関与するシンクタンク、NGOの関係者等が多数出席しました。パネリストの発言後の質疑応答、ディスカッションの時間では、会場の参加者からも発言が相次ぎ、政府・学界・NGO・シンクタンクの対話の重要性や、ソーシャルメディア活用の可能性や課題等につき、活発に議論が行われました。出席者からは、軍縮・不拡散問題を、人々が日常より気にかける問題、例えば、内戦やジェンダーに基づく暴力や一般犯罪といった問題と、結びつける必要がるといった指摘もなされました。最後に天野万利軍縮代表部大使が閉会の辞を述べ、会合は終了しました。

 

今回のイベントは、軍縮・不拡散分野における様々なデータや情報を、教育やソーシャルメディアの活用等を通じ、どのように政策立案や世論の喚起に役立てるかにつき、実際に軍縮・不拡散交渉に携わる各国の外交官や国連関係者に広く考えてもらう機会になったと考えます。我が国としては、今後も国連や各国関係機関と連携して、軍縮・不拡散分野における教育の重要性を広く訴えるとともに、政策形成のための効果的な情報発信や意見交換の実施にも努めていく考えです。

 

(了)

満席となった会場の様子

満席となった会場の様子

 

 

発言するSIPRIのブロムレイ氏

発言するSIPRIのブロムレイ氏

 

 

 

             

冒頭発言を行う西田大使

冒頭発言を行う西田大使

 

 

西田大使夫妻と式典で演奏をした子供たち

パネリスト(右から順に天野軍縮代表部大使、岡田東大准教授、国連軍縮部エニス氏、

西田大使、モントレー研究所ポッター博士、SIPRIブロムレイ氏)