2007年

 
 

第15回南南協力ハイレベル会合(代表部・JICA・UNDP主催サイドイベント)

JICA、ODAマーク、UNDPマーク

2007年5月29日

5月29日より6月1日に開催された第15回南協力ハイレベル会合の一環として、5月29日、国連日本政府代表部、マレーシア、ザンビア、インドネシアの各代表部とJICAおよびUNDPの共催によりサイドイベント「Deepening Partnership between Africa and Asia: Good Practices in South-South and Triangular Cooperation」が国連内で開催されましたので、以下のとおり概要を報告します。


1.会場には予定していた100名を大幅に上回る120名を超える出席者が詰め掛け、急遽追加のイスを手配したが、それでも足らず一部は立ち見となった。カメルーンのユージン・コドック計画大臣をはじめ、約20名の国連大使(AU、アンゴラ、ベニン、ウガンダなど)、各国代表部からの参加者が約70名強、国連機関からの出席者が約30名であった(UNDP、OSSA、UNCDF、UNFPA、UNHCR、UNIDO、UNIFEMなど)。


(1)大島賢三大使による挨拶

 南南協力は開発援助の中で重要度を増してきており、そうした中でアジア・アフリカ間協力は重要度を増してきている。2005年には記念すべきバンドン会合50周年のアジア・アフリカ首脳会議が開催され、その中でもアジア・アフリカ協力の重要性が謳われ、行動計画も採択された。インドネシアのアズマティ大使からはこの行動計画以降の動きについて紹介がある予定である。日本も長く南南協力を支持し三角協力を実施してきており、MDGsを達成に大きく資するものであると考えている。JICAアメリカ事務所長の熊代輝義所長からは南南協力に対する日本のアプローチ、取り組みをいただく予定。また、そのジェガデサン・マレーシアJICA事務所顧問から具体的な三角協力の事例を紹介していただく。国連においてはUNDPが南南協力において重要な役割を果たしてきており、その取り組みをアド・メルケルトUNDP副総裁よりお話していただける予定。日本としては、今年の国連開発システム3ヵ年事業計画(TCPR)および、UNDP、UNICEF、UNFPAの中期事業計画(MTSP)の決議・決定においては南南協力が主流化される必要があると考えている。今回、共催者となったマレーシア、ザンビア代表団にも御礼を申し上げたい。


(2)共催者(ザンビア、マレーシア)による挨拶

 マレーシア代表部より急遽参加できなくなった常駐代表の挨拶をラジャ・ナシュルワン・ザイナル・アビディン参事官が代読し、主にマレーシアのJICAとの共同による南南協力の取り組み事例などを紹介。ザンビア代表部からはムプンドゥ臨時代理大使が挨拶に立ち、JICAによるマレーシアとの南南協力がザンビアで成果を挙げてきており、日本政府とJICAに感謝したいと述べた。


(3)アジア・アフリカ首脳会議以降の2年間の成果(インドネシア:アズマティ大使)

 2005年のアジア・アフリカ首脳会議の成果に触れ、その後、昨年9月には南アとインドネシアによるフォローアップ会合が開催され、そこで多くの今後実施に移されるプログラムが合意された。いくつかのプログラムはジャカルタのNAMセンター等によりすでに実施されている。今後、より多くのパートナーがこうしたイニシアティブに参加してくれることを望んでいる。


(4)アジア・アフリカ協力に対しUNDPの行った業績の紹介(アド・メルケルトUNDP副総裁)

 UNDPの南南協力に対する取り組みの中でアジア・アフリカ協力は重要な柱の一つである。UNDPとしては、アジア・アフリカ協力について次の3点について特に重視している。第一は、アジア・アフリカ間の民間セクター活動の支援であり、UNDPはTICADにおけるアジア・アフリカ・ビジネスフォーラム等に協力してきている。第二は、南南協力によるキャパシティー向上支援である。第三は、新興ドナー支援である。今年3月にはタイ政府と共同でロシア等東ヨーロッパの新興ドナーを対象に援助マネジメント等についてワークショップを開催した。


(5)熊代輝義JICAアメリカ事務所長:南南協力に対する日本およびJICAのアプローチ紹介

 JICAは南南協力および三角協力に対して積極的に取り組んできている。南南協力は次の二つの視点から途上国開発に資すると考えられる。一つは、南南協力が南北協力を補完する、という点である。途上国自身の開発の経験は他の国の開発にも寄与すると思われる。二つには、日本の発展の経験が示すように被援助国もいつか他国に対する援助の実施者になることができ、南南協力はそうした中進国に対して援助実施者になるきっかけを作ることができるからである。JICAにとって三角協力のパートナーは南の多くの機関に広がってきており、JICAが関与することにより南南間の協力がMDGs達成に寄与するものであることを確保しつつ、また、援助調和化などの大きな流れからも反れない形での協力が可能になってきている。

 JICAおよびそのパートナー機関は、こうした南南協力が持つ強みを生かしできるだけ現場でインパクトが出るよう努力をしてきている。そのために大きく3つの視点を重視してきている。第一は、プログラムをニーズに合わせる様々な努力を行うという点である。アジア側が共有したい経験・知識を提供するということではなく、実際にアフリカ側が必要としている内容を提供するということであり具体的には「アジア・アフリカ知識共創プログラム」などを実施してきている。第二は、地球規模の課題への取り組みおよび地域間協力に資するという点。そのためにJICAは12カ国とMOUを締結し、環境問題など地球規模あるいは地域間で取り組みな必要な問題に取り組んでいる。第三は、パートナー間での調整メカニズムの構築である。1990年代にASEAN加盟国を増加していた際には、ASEAN国間の経済格差を是正するためにJICA-ASEAN地域協力会議(JARCOM)を設立し、調整にあたるなどしてきている。

 南南協力を成功させるためには政治的なコミットメントが必要である。また、新興ドナーと伝統的ドナーが協働することも必要である。JICAはUNDPと南南協力で多くの協力を実施してきているが、今後、さらに多くのドナーがこの努力に参加して欲しいと願っている。


(6)ジェガデサン・マレーシアJICA事務所コンサルタント(元マレーシア工業開発庁(MIDA)副長官)

 マレーシアは、1957年に英国から独立後1970年頃までは一次産品輸出に依存していた。ターニング・ポイントは国内で人種暴動が起きた1969年であった。この暴動の原因は、きわめて高い失業率と、人種間での富の不均等な配分であった。この危機を乗り越えるために、政府は10年間の長期ビジョン(Outline Perspective Plan: OPP)と新経済政策(New Economic Policy: NEP)を策定し実施に移した。この結果、人種暴動が始まるまでは工業製品をただの一つも輸出していなかったマレーシアが工業化に成功。1980年には世界最大のセミコンダクター輸出国、エアコンの世界第二位の輸出国にまでなった。どうしてこれが可能になったのだろうか。これが、JICAが三角協力を通じザンビアに共有しようとしている経験である。

 2005年3月にJICAとザンビア政府で「希望の三つの力(Triangle of Hope)」プログラムの MOUを締結。マレーシアの経験に基づき、アフリカの成長促進のための戦略的イニシアティブを「希望の三つの力(Triangle of Hope)」と「四面戦略(Quadrant Strategy)」という概念に整理し、ザンビア政府の強いオーナーシップのもとで活動が開始された。

 重要なのは比較優位ではなく、競争優位である。例えば、マレーシアは1970年代まではゴムの主要な生産国であったが、ゴムの加工品の主な輸出国は北欧諸国であり、ニュージーランドであった。これらの国にはゴムの木は一本もない。マレーシアは資源があるないという比較優位ではなく、労働力と競争力優位にもとづいて産業政策を行った。この結果、1980年には北欧諸国・ニュージーランドの企業は工場をマレーシアに移転し、マレーシアはゴム加工品の比較優位も競走優位も手に入れるようになった。比較優位は、地理的なものや資源など所与のものであるが、競争優位は人間が自ら作り出すものである。これが発展のキーである。「希望の三つの力(Triangle of Hope)」とは何であろうか。日本でも米国でもマレーシアでも、発展する国はどこでも次の三つが力を合わせていくことが必要である。具体的には、政治家・行政官・民間企業の3つの力が連携し、(イ)political will & integrity、(ロ)civil service efficiency & integrity, (ハ)private sector dynamism & integrityを発揮することが不可欠。もしこの3つの一つでも欠けるなら、その国の努力は失敗に終わることは確実であろう。投資を実際に呼ぶこむために重要なのは投資会議を実施することではない。「四面戦略(Quadrant Strategy)」こそがキーである。最初に必要なのは、(イ)競争優位(Competitive Advantage)に基づく事業(Projects)を見つけること、(ロ)そして、次に必要な投資環境 (Invest Environment) を整備すること、(ハ)実際の投資を推進(Promotion)すること、そして(ニ)実施(Implementation)を行いフォローする、という4つの要素が不可欠である。会議をしてよい書類を作ることは目的ではない。実際に投資が行われ現場が変わることこそが目的なのであって、それを忘れてはならない。

 ザンビアにおけるJICAの活動では、大統領の支持のもとに同プログラムを担う大統領直轄の委員会を設置。自分を含むJICAチームは、大統領の強い政治的リーダーシップのもと政治家・行政官・民間企業と長い対話を重ねて、官民連携による12のタスクフォースを設置(農業、綿産業、人材育成、保健医療、ICT、観光、金融、中小企業育成等)し、そのうちの8つのタスクフォースについてはプロジェクトの閣議承認まで行われ、今後、実施をモニタリングしていくことになっている。現在、実際にJICAの協力を得てマレーシアやインドの企業などがザンビアに投資を開始している。今後、ザンビアはこうした努力を経て成功できると考えている。



添付資料:

資料1:大島大使・冒頭挨拶 (ファイルタイプ:Word / ファイルサイズ:49KB)


資料2:マレーシア大使・挨拶 (ファイルタイプ:Word / ファイルサイズ:33KB)


資料3:熊代JICAアメリカ事務所長プレゼンテーション (ファイルタイプ:Word / ファイルサイズ:45KB)


資料4:JICA熊代所長パワーポイント資料 (ファイルタイプ:PDF / ファイルサイズ:230KB)


資料5:ジェガデサン・マレーシア事務所顧問パワーポイント (ファイルタイプ:PDF / ファイルサイズ:1.63MB)

第15回南南協力ハイレベル会合
第15回南南協力ハイレベル会合(代表部・JICA・UNDP主催サイドイベント)