西田大使定例記者会見(9月)

2012年9月6日

6日(木)、西田大使は、代表部において定例記者会見を行いました。当地邦人プレスから計10名が出席しました。

 

1.冒頭発言


(1)第66回国連総会の成果と第67回総会の見通し

 

【第66回国連総会の成果】
9月17日に国連総会の第66会期が閉会する。今会期の成果について、国連の扱っている分野別に説明したい。

 

<平和と安全の分野における動き>
・66回総会においては、いわゆる「アラブの春」の流れに位置付けられるリビアやシリアの事態が大きく取り上げられたセッションであった。リビアにおいては、安保理決議に基づいて文民の保護のため軍事行動が行われた。これに対し、シリアのケースでは、安保理の機能不全に陥り、国際社会としてかかる民主化の努力を後押しすることが決して容易ではないことが悲劇的な形で示されていると言わざるをえない。
・こうした中において、法の支配、人権、保護する責任といったテーマについての国連での議論は重要性を増している。一例として、昨日(注:9月5日)総会議長の下で行われた「保護する責任」に関するインターアクティブ・ダイアローグでは、私から保護する責任の実施のために安保理を含む国連が迅速に結束して行動することの重要性を指摘するとともに、大規模な残虐行為を防止するためのICCの重要性を指摘した。
・日本との関係においては、4月13日に北朝鮮によるミサイル発射が行われた。安保理は、4月16日に右発射を強く非難する議長声明を発出した。我が国は、米韓、中ロ等の関係国と緊密に調整を実施し、結果として、議長声明が、迅速かつ我が国の考えが多く反映される形で発出されたことは大きな成果であったと自負している。
・加えて、今年は、1992年の国際平和協力法制定から20周年の節目の年にあたる。南スーダンでは、6月から自衛隊部隊の本格活動が開始された。私も本年ジュバを訪問した。自衛隊部隊が南スーダン、さらにはアフリカ全体の平和と安定のために実質的な貢献を行う意義は非常に大きいものと考えている。日本のPKO活動は、新たに行った南スーダンに留まることなく、東ティモールやハイチ等においても日本の施設部隊等が活躍してきている。東チモールのUNMITは、今年末にその活動を終了する予定である。首尾良くそのような事態に至った時には、国連PKOが成功裡に行われた、かつアジアにおいて行われた意義が、非常に大きなものになるであろうと考えており、我が国としても更なる努力をしていきたい。ハイチにおいては、我が国は、2010年2月よりMINUSTAHに要員を派遣し、ハイチの被災者に対する支援を行い、極めて高い評価を得てきたが、我が国が考えてきた任務が実質的に達成し得たものと認識をし、撤収することとなっている。
・軍縮不拡散の分野では、昨年12月、我が国が主導した核軍縮決議「核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動」が国連総会にて採択されたが、米国を含む過去最多の共同提案国(我が国を含め98か国)とともに、169か国という圧倒的多数の賛成を得たものであった。
・また、同じく昨年12月、「あらゆる側面における小型武器非合法取引」決議が総会にてコンセンサス採択された。この決議との関連では、現在、小型武器行動計画会議が行われているが、これについては後ほど触れる。
・本年7月の武器貿易条約(ATT)国連会議については、我が国は原共同提案国としてATT交渉に積極的に参加し、貢献をしてきたが、残念ながら同会議においては、条約テキストの採択に至らなかった。今後、来会期を通じて、(各国と連携を取りつつ)ATTの採択に向けて積極的に取り組んでいく。
・その他にも、昨年9月、玄葉大臣の御出席を得て、軍縮不拡散イニシャティブ外相会合(NPDI)が当地で開催された。本年も当地で外相会合を開催の予定。

 

<開発分野における動き>
・本年6月に行われたリオ+20は、グリーン経済への移行をはじめとして、持続可能な開発を推進するための国際的な取り組みを進展させる重要な機会となった。我が国からは玄葉大臣が出席し、緑の未来イニシアティブを発表するなど、積極的な貢献を行った。
・MDGsについては、我が国は昨年9月、玄葉大臣が出席してMDGsに関するサイドイベントを共催し、現行MDGsの強みを活かしつつ、成長と雇用、衡平性といった新たな要素を含める等、幅広くかつ非公式な議論を行ってきている。そのため、ポストMDGsコンタクトグループを結成し主導している。
・防災分野においては、4月に防災をテーマとする総会非公式テーマ別討論が開催され、その成果は、7月に我が国が東北で開催した「世界防災閣僚会議in東北」の重要なインプットとなった。
・人間の安全保障については、本年4月に事務総長の報告が、総会の公式討論を経て、我が国とヨルダンが主導して、人間の安全保障に関する共通理解を盛り込んだ決議案の交渉を行っている。現在大詰めの段階にきている。

 

<人権分野の動き>
・第3に、人権分野では、冒頭で触れた「アラブの春」等の文脈もあり、人権保護の重要性が改めて浮き彫りとなった。このような中で、第3委員会では昨年12月、北朝鮮人権状況決議が、賛成123票と、前年と比べて支持を大きく伸ばす形で過去最多の賛成票を以て採択された。リビアやシリアの人権状況についても、国連総会・第3委員会や人権理事会の決議はそれぞれの経緯の中で重要な役割を果たした。
・また、婦人の地位委員会(CSW)において、我が国は、災害対策・復興プロセスにおける女性の参画の重要性を謳った「自然災害とジェンダー」決議案を提出し、採択された。
・さらに、日本のイニシアティブによるボランティア国際年10周年であった昨年、我が国はボランティアに関する決議案を提出し、97か国の共同提案国を得てコンセンサス採択された。

 

<国連の強化>
・第66回総会においては、安保理におけるシリア、パレスチナ(国連加入)問題に関して、安保理が、十全な対応ができないという事態が生じた。これを受けて、総会が安保理を補完する役割を果たす局面が生じた。これは第66回総会の1つの特徴であるといえる。
・安保理改革については、我々の期待に見合う実質的な進展が得られていない。「短い決議案」を通じた働きかけの結果、安保理改革に対する気運が高まり、政府間交渉での突っ込んだ議論がリトリートの場を含めてできたのは一定の成果。これらの実績を踏まえ、来会期においては、真の交渉に繋がるよう努力を継続・強化していきたい。
・行財政分野では、財政規律の強化を求める我が国の立場も反映し、通常予算が14年ぶりに前年度比で減少した(2010-11年修正予算比で約4%減)。また、国連のマネジメント改革については、潘基文事務総長の第2期目の重要な柱であるとも言え、また、高須前国連大使が管理局長に就任したことも歓迎される動きもあった。

 

<国連関連選挙>
・第66回総会においては、まず、昨年10月のECOSOC理事国選挙において我が国が再選された。また、昨年11月には国際司法裁判所(ICJ)裁判官選挙において小和田裁判官が、また国連国際法委員会(ILC)委員選挙において村瀬教授がそれぞれトップ当選を果たした。さらに、最近では、6月に開催された大陸棚限界委員会(CLCS)委員選挙において浦辺教授が再選を果たした。

 

<大陸棚限界委員会の勧告>
・4月26日、我が国が行った大陸棚延長申請に関する大陸棚限界委員会の勧告を受領した。申請した7海域のうち6海域について勧告が出され、沖ノ鳥島を基点とする四国海盆海域をはじめ、約31万平方キロメートル(日本の国土の約8割に相当)に及ぶ大陸棚延長が認められたのは今総会会期での重要な成果。

 

【第67回国連総会の見通し】
9月18日より、第67回総会が開催する。幾つかの主要な課題について、現時点での見通しを述べたい。

 

<平和と安全の分野>
・イェレミッチ次期総会議長(セルビア)は、一般討論演説のテーマとして「平和的手段による国際紛争または国際情勢の調整または解決」を提示した。このテーマとの関連では、南北スーダン情勢やソマリア情勢に関しては、国際社会による平和的手段による解決へ向けた努力が一定の成果を上げていると認識している。我が国もかかる国際社会への努力において、PKO派遣等を通じて、これら諸国の安定、平和及び国造りへ向けた実質的な貢献を行っており、今後とも来会期においても、かかる支援を継続する。
・また、「アラブの春」という歴史的な変革を受け民主主義や法の支配の重要性に注目が集まる中で、9月24日に開催される法の支配に関するハイレベル会合は、我が国として極めて時宜を得たものであると考えている。
・北朝鮮の核、ミサイル問題及びイランの核問題は、引き続き地域及び国際社会全体にとっての大きな懸念事項。就中、指導部の交替を経た北朝鮮が、これらの問題につきどのような行動を取るかについては、各国ともに引き続きその動向を注視していく。
・イランの核問題についても、引き続き国際社会の懸念は強く、安保理決議に基づく不拡散体制の実施からも、我が国は、イラン制裁委員会の活動に協力していく。
・その関連で、制裁に関する安保理決議の着実な履行は、国際の平和と安定における国連の役割の強化に繋がる、極めて重要な視点と考えており、日本が主導する形で開催している制裁・不拡散軍縮に関するセミナーも継続し、定着化を図っていきたい。

 

<開発分野>
・まず、リオ+20で発表した緑の未来イニシアティブのフォローアップを着実に行うとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の策定等、成果文書のフォローアップに積極的に関与していくことが、来会期の開発分野における大きな柱になるであろう。また、ポストMDGsでは、ハイレベル賢人パネルに、菅前総理がパネルメンバーとして加わり、9月から本格的な議論が始まる。我が国が主導するポストMDGsコンタクトグループ会合の成果も活かしつつ、かかる動きに積極的に参加していく。
・防災分野においては、2015年の第3回世界国連防災会議の我が国開催を次期国連総会中に決めることを目指す。

 

<人権分野>
北朝鮮人権状況決議の提出を含め、我が国としての役割発揮に努力していく。また、昨年のボランティア決議に続き、今後のボランティアの方向性を提示する決議案を提出する予定。

 

<安保理改革>
安保理改革については、引き続き政府間交渉の場を通じて議論を継続していくことになろう。前回の第8ラウンドでは各関心国グループの立場について議論を深めることができた反面、これらグループの立場の違いについても明らかになったことを踏まえ、真の交渉の開始に繋げていく。

 

<行財政分野>
「Do more with less」に基づき効率的な国連を目指すマネジメント改革に向けた事務総長のイニシアティブを我が国としても支持していく。

 

<国連関連選挙>
・第67会期でも、人権理事会理事国選挙や国連分担金委員会選挙、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)構成国選挙等を控えているところ、日本が国際社会に貢献できるよう引き続き努力を続けていきたい。

 

(2)シリア情勢について


・シリアにおいては、主要都市における激しい戦闘が継続している。7月に露中による3度目の拒否権行使によって安保理決議案が否決され、8月19日にはUNSMISの任務が終了するに至り、国連を中心とする外交的な活動は頓挫をしている。他方、8月3日には、圧倒的な多数(賛成133、反対12)によって総会決議が採択され、国際社会の意思が明らかになっているにもかかわらず、引き続き安保理の中に存在する深い分断のため、効果的な対応を行えていないことは極めて残念。
・我が国としては、アナン氏の辞任を受け、9月1日に就任したブラヒミ新特別代表を中心とした外交努力を全面的に支持していく。
・また、シリアの情勢を踏まえ、特にシリアの人道状況が極めて深刻な状況になっていることを深く懸念している。我が国としては、8月24日に、UNHCR及びWFPと協力し、トルコ、ヨルダン及びレバノンに逃れているシリア難民に対して食料、医療、衛生等の分野で支援を行うため、追加的に500万ドルの緊急無償資金協力を行うことを決定した。

 

(3)第2回国連小型武器行動計画履行検討会議(8月28日~9月7日)について


・「事実上の大量破壊兵器」と呼ばれる小型武器については、不法な武器の流入、国境管理の不備等により、紛争の長期化・激化を招き、復興開発・平和構築に大きな障害となってきた。こうした問題に対し、我が国は90年代から、国連において小型武器問題を取り上げるように主唱。
・その後、2001年に小型武器行動計画が採択され、6年に1回、行動計画の進捗のレビューと国際社会で取り組むべき課題を議論する履行検討会議が開催。残念ながら2006年の検討会議では成果文書の採択に至らなかった。
・過去10年あまりの国際社会の取り組みの結果、国連、地域国際機関(OAS、AU、OSCE等)を中心とした、小型武器問題に関する能力向上のための協力が進展し、この問題に対する国際社会の関心・関与は確実に増大(注:我が国もUNDP等を通じた小型武器回収・管理に関する能力構築のプログラムに支援。最近ではコートジボワールへの支援例あり)。
・会議での協議は最終段階を迎えており、仕上がりの姿については予断を許さない。2006年の成果文書採択に至らなかった経験を踏まえ、前向きな成果文書採択が行えるよう、我が国としても最終日まで積極的に交渉に参加する。

 

 

2.質疑応答


(問)シリア問題に関し、昨日の「保護する責任」の会議において、事務総長が多数発言している一方、軍事介入の可能性ありとの議論もあるが、今後の展望如何。
(答)国連、更に言えば安保理、また各々の国が各々持っている外交的な手段等、場合によってはそれ以外の手段を通じて、事態の改善のために努力をしていくという構図は引き続き続いていくものと考えている。国連を舞台とする外交的努力については、残念ながら頓挫をしている。ブラヒミ氏の就任自体歓迎することであり、また、日本としては積極的に、全面的に協力していくという方針については何の揺るぎもないが、現下の状況が、いわゆる「6項目提案」を中心とする国連の仲介努力が進展する見通しが開ききれていないというのが実状である。これを如何に打破していくか、国連の主要メンバーとして今後模索をしていくとともに、我が国が国連を離れた所を通じてどのような貢献ができるのか、引き続き真に模索する時期にきている。

 

(問)国連を離れた所というのは、シリアの友人会議等であるか。
(答)然り。

 

(問)停戦の実現方法と並行して人道状況についても懸念が高まっているとの話であったが、日本の人道支援に向けた今後の追加的な協力について如何。
(答)現在、日本が具体的に行っているシリアについての行動は2つある。1つは制裁措置を取っていること、もう1つは、人道支援に実際に携わっている国際機関(国連機関)の支援に対する資金供与という形を取っている。このような実績を踏まえ、更に何ができるかが中心的な課題であると考えている。他方で、友人会議等の場を通じて、どのような支援ができるか、積極的に参加して日本としての考え方を纏めいく必要がある。

 

(問)第66回総会の特徴として、シリア問題に関連し、安保理の機能不全から国連総会が前面に出ることがある。具体的には非難決議が2つ採択された。そのうち1つはアナン氏の任命に繋がる決議であった。安保理のみがメンバー国に対し法的拘束力をもった決議を行うことができるという面もあるが、第67回会期において、国連総会がシリア問題で何らかの役割を果たすという期待如何。
(答)法的な整理は発言されたとおりであり、安保理が国連憲章に則れば、平和と安全に関してプライマリーな責任を持つ機関であり、加盟国を法的に拘束しうる等々施策をとれるのも安保理であるため、まずは第一に安保理に国連憲章で期待されている役割を考え、本来あるべき対応をとるのが筋であることは間違いない。筋があるにも関わらず、この2年間、安保理は動いていない。また、3回に亘りダブルビートが出るという、国連の安保理史上においても希有な状況が起きており、極めて不正常な状況である。全てのメンバー国が参加し、国連を代表する主要な機関の1つである総会が、国際社会全体を揺るがす問題について、与えられた権限役割の中で対応することは当然のことであると考えている。このような動きが、安保理の行動・対応に対して強いインパクトを持つことを期待し、これらが機能しない時には総会、あるいはジュネーブの人権理事会を使うという大きな意味での国連組織全体を活用して動いて行くということが、近々の課題になっていると考えている。

 

(問)第67回総会に一般討論演説を行う各国首脳が来訪するが、注目点如何。
(答)一般討論演説は同総会の冒頭にあたり、多数の首脳が各国から集まり、各国首脳が自国の国情を背景に国社会全体について、ハイレベルから物事を発信するという、極めて重要な場面である。現下の国連が抱えている重要な問題、深刻な事態についての言及が多くされるということは、想像に難くない。取り上げ方はをれぞれで、各国の国情、政治的な立場によって異なるが、シリア問題に象徴されているような現下の平和と安全、人権が大きく損なわれている事態、人道状況が大きく損なわれている事態に議論が集中するであろう。同時に、政治、平和、安全、人権、開発は大きな問題である。貧困が紛争の原因かどうかについては古くから神学論争が行われているが、一時的な原因であるかは問わず、貧困問題、開発問題そのものが重要な課題であることについて異論はされていない。国連にとって大きな課題である問題が引き続き開発問題、特に世界の経済情勢が厳しい状況にあること、あるいは従来の北と南の構図では括れないような国際社会の構造を踏まえて、1人1人の幸せを念頭に置きながらこれらの問題や、環境エネルギー問題等について、国連がどのような強いメッセージを発信するか、リオ+20、ポストMDGsを話していく中で、当然議論されるため、各国首脳の発言においても、この点が言及されることが想定される。

 

(問)先ほど、対北朝鮮のミサイル発射のときの連携で、日米韓非常にいい連携がとれたという話があったが、現在の竹島問題を踏まえ韓国とのぎくしゃくした関係の中で今度行われる安保理メンバーの選挙における、日本政府の現段階での支持・不支持はどのようなスタンスなのか。どういう態度で、何がポイントで支持・不支持を決めるものなのか。
(答)これは秘密投票であり、従って事前にも事後にも日本政府がどこの国を支持した・支持しないというのを申し上げることはない。他方で、一般的な判断基準というのは、国連憲章にも明示的に書いてあるように安全保障理事会が持っている役割に照らし、国際の平和と安全に対してしかるべき貢献ができる・能力がある、それから然るべき貢献をする意欲の有無というのが1番大きな判断基準である。2番目の判断基準が、その地域の代表性、地域バランスである。2番目ついてはそれぞれの地域グループから出てくるということによって事実上担保されているということになるが、そうなるとますます1番目の部分が大事になってくるのではないか。そういうものに加えて、日本という国がある国を選び、選ばないという判断をするわけであるから、日本と当該国の二国間関係が重要なファクターになるというのは当然であるということができる。(了)