西田大使定例記者会見(7月)

2012年7月26日

26日(木)、西田大使は、代表部において定例記者会見を行いました。当地邦人プレスから計9名が出席しました。

 

1.冒頭発言
(1)アフガンに関する東京会合に際しての事務総長の訪日
・7月8日,カルザイ・アフガニスタン大統領,潘基文国連事務総長を始めとする,約80の国及び機関の代表の参加を得て,アフガニスタンに関する東京会合が成功裡に終了した。同会合では,アフガニスタンと国際社会の「変革の10年」(具体的には2014年~2025年)における長期的なパートナーシップを,お互いのコミットメントにより具体化するという「東京フレームワーク」の設立を含む「東京宣言」を採択した。また,7月23日,東京会合の成果を歓迎するとの主旨の安保理プレスステートメントが発出された。
・今次東京会合では,アフガニスタン側から,開発戦略の効果的実施やガバナンス改善についてのコミットメントが行われ,国際社会からは,2012年から2015年までの4年間に160億ドルを超える規模の支援に係るコミットメントが表明された。我が国については,2012年から概ね5年間で,最大約30億ドル規模の支援を行うことが表明された。
・潘事務総長からも,挨拶の中において,東京フレームワークを歓迎し,国連は今後も国際社会の主要アクターと緊密に協力しつつ,権限移譲が進展するにつれ発生するであろう空白を埋める努力を(国連が)行っていくとの力強いメッセージが発出されたところである。
・今後はこれを着実にフォローアップしていくことが不可欠である。東京宣言においては,2年毎の閣僚レベルのフォローアップ会合を実施するということに合意をし,2014年に英国において第1回の会合が開催されることとなっている。
・なお,潘基文国連事務総長は,非常に短期間ではあったが,7日から9日まで,外務省賓客として公式訪日した。事務総長は,「アフガニスタンに関する東京会合」に出席した他,野田総理大臣,玄葉外務大臣と意見交換を行い,地域情勢,グローバルな諸課題の解決にあたっての日本と国連の協力関係を確認した。
・野田総理及び玄葉大臣は,2期目に入った潘事務総長との意見交換により,今後優先的に取り組むべき課題,方向性について,認識の共有を図ることができたと考えている。これらの意見交換を通じて,地域情勢,持続可能な開発,人間の安全保障,防災,法の支配を含むグローバルな課題,国連のマネジメント改革や安保理改革等国連の強化について幅広く日本と国連の協力の強化を確認することができたと考えている。

 

(2) シリア情勢
・シリアについては,不遵守の場合の制裁の要素を含む安保理決議案が,露中によるシリアに関しての3度目の拒否権行使により19日に否決され,翌20日に,UNSMISの任務の最後の30日間延長を決定する決議(第2059号)が採択されたところである。
・国際社会の強い働きかけにもかかわらず,シリア当局は,自ら行った約束に反し,重火器の使用などによる弾圧を継続をしている。かかる看過できない非人道的状況を前にして,拒否権が3度行使されることにより,安保理が効果的な決定を行えなかったことは極めて遺憾と考える。
・我が国としては,アナン特使を中心とした外交努力を支持し,暴力の停止,政治的移行の実現のため,フレンズ会合の枠組みを始めとして,関係国と協力し,これまでも取り組んできているところであるが,安保理が本来期待される機能を果たせない中,かかる有志国との協力を継続していくことになる。

 

(3)ハイチからの自衛隊PKO施設部隊の撤収について
・17日の閣議において,官房長官から,MINUSTAHに派遣中の我が国自衛隊施設部隊等のハイチ国際平和協力業務の今後の予定について,本年10月中旬を目途に施設活動を終了し,徹収に向けた調整を開始する旨発言が行われた。
・我が国は平成22年2月から,MINUSTAHに自衛隊の施設部隊及び司令部要員を派遣し,瓦礫の除去,整地等を通じ,ハイチ地震で大きな被害を受けた同国の被災者に対する支援を行ってきた。その後,地震発生から約2年半が経過する中,ハイチの復旧状況に相応の進展があり,自衛隊施設部隊等が担ってきた応急的な復旧活動の必要性は低下しつつあるという状況を踏まえ,自衛隊はハイチ地震からの復旧に十分に貢献したと評価し得ることから,今般,ハイチ国際平和協力業務の終了に向けた準備に着手することとなった次第である。
・我が国のハイチに対する各種支援活動の成果,また,自衛隊部隊の能力や規律は,国連関係者,ハイチ政府,ハイチの人々を始め,国際社会から高く評価されてきたと承知している。

 

(4)武器貿易条約(ATT)交渉の現状・見通しについて
・7月2日から開始された武器貿易条約の交渉は明27日が交渉最終日となっているが,条約案を採択できるかはまだ予断を許さない状況にある。
・現在議長が各国に示した条約案に基づき最後の調整が主要国の間で精力的に続けられているが,現時点でも様々な箇所について,関係国の間には立場の隔たりがあるのが現状である。我が国としては,ATTを国連で交渉することを提案した原共同提案国の一つとして,ATT実現を目指す主要な関心国,ASEANをはじめとするアジア太平洋諸国,さらにはATTに関し,むしろ慎重・批判的な見方をしている国々とも協議を続けながら,高い規範水準を維持し,多くの国が加入できる普遍性を有する条約が採択できるように,最後の最後まで努力を続ける考えである。

 

(5)人間の安全保障
・我が国は,「人間ひとりひとりの能力を開花させることによって,その国あるいは社会を発展させることができる」という人間の安全保障の考え方を外交政策の柱の1つ位置づけて,ODA大綱の理念,中長期計画等にも取り込み,ミレニアム目標の達成,防災,平和構築等の地球規模の問題にこれまでも率先して取り組んできたところである。
・また国連の場においては,人間の安全保障の概念の明確化,定義について関係国が取り組んできており,その中でも我が国は主導的な役割を果たしてきた。2005年の国連首脳会議成果文書,2010年の人間の安全保障に関する国連総会決議に基づき,2011年には非公式なテーマ別討論も行われた。その後本年4月に,人間の安全保障に関する事務総長特別顧問である高須大使(現管理局長)が取りまとめた国連事務総長報告(A/66/763)が発出され,右を受けて,6月4日総会公式討論が行われたところである。
・これらの取り組みを踏まえて,現在,我が国は,ヨルダン(人間の安全保障ネットワーク(HSN)の議長国)と共同ファシリテーターとして,決議案策定に向け,努力をしている最中である。

 

 

2.質疑応答
(問)武器貿易条約について。今(条約)案が出てきたところで,本日修正案が出るかというところだと聞いているが,現在の案についての日本政府としての評価は如何。
(答)交渉中であり,また,各国の意見が依然隔たっているという状況にあるため,詳細について述べることは賢明ではないと思うが,先程述べたとおり,日本としては,なるべく高い規範性をもって,かつ,より多くの国が入ってこれるような普遍性のあるものを求めて努力をしてきた。日本は国内的にも武器管理,輸出管理の面でこれまでも大変な努力をしてきた国でもあるので,その実績を踏まえ,より広い国が共通の目的のために参画できる枠組みを国連の条約として作っていくことは,非常に意義があるものと考えている。その意味で,なるべくスコープが広い,あるいはその具体的な対応においても,より多くの取引が対象となるような、さらに透明性を保つための報告の義務等々についても,これまで主要な中心国として努力をしてきたので,進めるところまで進みたいと思っている。どの点についても,慎重な国があるので,それがどの辺りで折り合うか,最後の調整を続けているところである。

 

(問)安保理改革について。7月2日の政府間交渉で,西田大使から,長期の議席も含めて議論する用意があるとの発言があった。他方,昨年の11月には兒玉大使が同じ政府間交渉の場で,この長期の議席について検討されるべきだという発言があった。この2つの発言の間に,基本的な立場に変化が出ているのか,それとも基本的な立場に変化はないのか。
(答)基本的な立場については,これまで累次にわたり質問にお答えしているが,真に意味のある安保理改革であるためには,非常任(理事国)のみならず,常任理事国についてもメンバーが拡大されるべきであるというのが,日本の基本的立場の中でも,核となる部分である。他方,これに強く反対しているグループがあるというのも,ご案内のとおりである。ご指摘の長期の議席を検討する用意があるというのは,その間を繋ぐ工夫を行うことについて日本は柔軟である,というメッセージである。しかし,長期の議席ということだけを述べているわけではなく,それは一定の期間を経た後に,常任理事国になることの可能性を含めた長期議席ということである。ある意味では停滞をしかねない,このような政府間の交渉を前に進めるために,20年間に亘り最も推進し,外交努力を最も払ってきた日本としての自負・実績を踏まえて,今の事態を切り開くために,日本として何ができるかという観点から,1つの考え方を示したものである。先程の質問に戻れば,そういう意味に於いて,兒玉大使の発言と私の発言に違いはないと思っている。

 

(問)安保理改革について,その後,各国からのリアクションの変化について如何。
(答)色々な立場があるが,それぞれの反応があり,収斂するのは難しいと思う。しかし,前回の会合における各国の発言を振り返れば明らかだが,新味はほとんどなかった。その中において,日本からの発言が,明確な形で1つの考え方を提示したという意味において,一定の注目を浴びた。日本が本件について非常に真摯に取り組んでおり,本気で柔軟性を発揮して前に進めようとしている真剣味については,これを高く評価しているという国は少なからずあったということはご報告できると思う。

 

(問)シリア問題について。決議が否決された後に米も英も安保理の枠組みとして進めていくのは中々難しいので,その外でやるということを強調していた。安保理としてシリア問題は諦めたとも見えるが如何。
(答)現在日本は安保理のメンバーではないため,安保理がどのように考えているかを代弁することはできないが,安保理決議案を以前出した米英等からすれば,ぎりぎりのものについても,3度目のvetoがダブルで出されたという失望感は,想像に難くないと思う。従って,ご指摘の拒否権発動直後に行われた米英等の各国の発言振りは,それを反映したものと考えている。他方で,日本の立場からすれば,世界の平和と安全に権限と責任を持っている安保理が,これだけ重要な国際問題について,これからはやらないということが選択肢としてあるはずはないと考えている。非常に難しい状況であれ,30日という期間を限って,モニタリングについてもやっていくということで,それには一定のトリガーが入っている。これはUNSMISは終わってしまうということであるため,その事態になれば安保理としては,少なくともオン・ザ・グランドでは何もないという状況を強いてしまう。ある種の,自分に課した賭けのような面があると期待をしているので,その30日間を最大限に駆使をして,安保理としての努力,また,当然のことながら,安保理の外でも色々な動きがあるが,安保理が,これで30日経てば活動は終わりなのだ,ということはあってはならないと考えている。

 

(問)有志国として,これから人道支援や反政府勢力への支援をしていくと英米は発言していたが,その枠に日本も一緒に参加するということは視野に入れているか。
(答)現在,日本がやろうとしている仕事の1つは,コフィー・アナンのプランにもあるように,シリアに暫定的な挙国一致内閣ができることに向けて努力してもらいたいと反政府勢力へ働きかけること。これはこれまでもやってきており,今後もやっていくことになると思う。しかし,米英が一部行っていると報道されている,資金的なもの,あるいは武器供与を日本がすることは全く考えていない。

 

(問) パレスチナについて。先日アラブ連盟は,国家承認をグレードアップして求めていくと言っていたが,現時点での日本の考え方如何。
(答)数か月前の段階で,パレスチナに対して加盟国としての立場を認めるべきであるという趣旨の決議案を国連総会に持ってくるという動きがあったことはご案内のとおりであるが,その時と基本的には日本の立場は変わってない。日本はパレスチナが自分の国を作りたいという願望を持っていることについては,これを非常に理解をしているということ,物事の解決のためには,両当事者が直接交渉をしなければいけないこと,具体的な決議案が提出されることになれば,決議案の文言を見ないと最終的な態度は決められないということについては今も変わっていない。只,今の瞬間において,そのような動きが戻ってきていることは承知していない。

 

(問) 人間の安全保障について。ヨルダンと共同して決議案を採択されるということに関して,時期的にはどれぐらいを目指しているのか。
(答)基本的には,早ければ早いほど良いと思っている。先程ご紹介したように,ある種の手順を踏んで積み上げてきた外交努力であるので,各メンバー国,より多くのメンバー国の賛同を得て,早いタイミングで決議案を採択に持込みたいと考えている。デッドラインがあるとすれば,今回の会期中には是非やりたいと思うが,それは今回の会期中でなくてはいけないという意味ではなく,できれば今日でも良い,明日でも良い,早ければ早いほど良いというのが,日本政府の立場である。

 

(問)人間の安全保障の決議案は,内容的にどういう概要の決議案になっているのか。
(答)人間の安全保障という概念が,どういうものであるかということについて,前の決議が,人間の安全保障という言葉の定義をもう少し検証しなさい,もう少し議論し,もう少し定義を詰めたらどうか,という決議であり,そのラインで色々議論している。それまでに行われてきた具体的なプロジェクトもいくつもやってきているので,そういうものを通じて,定義というよりは共通の理解,どういうものが人間の安全保障という概念の中で,より多くの国にとって理解されているかということと,それを実際の現場で,どうやって今後とも進めていくのかということ。それから実際にそのためにはお金が必要なので,ファンディングについて,各国の加盟国に是非皆さん拠出してくださいと声掛けするのが,大きなところである。


(了)