21日(木),西田大使は,代表部において定例記者会見を行いました。なお,当地邦人プレスから計14名が出席しました。
1.冒頭発言
(1)南スーダン出張報告
・6月12日(火)から6月14日(木)にかけて南スーダンを訪問した。我が国が国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に派遣をしている陸自の施設中隊の活動現場及び宿営地を視察した。同時に,ヒルデ・ジョンソンUNMISS代表に加え,バルナバ・ベンジャミン情報・放送大臣等の南スーダン政府要人等との会談も行った。その前後には,ケニアのナイロビとエチオピアのアディスアベバに立ち寄り,それぞれ政府関係者とも意見交換を行った。
・自衛隊部隊の視察では,給水点までの道路の整備あるいは北スーダンからの帰還民の一時収容施設の造成等,地域住民の生活向上に資する活動を着実に行っており,南スーダン政府関係者はもとより,実際にそれらを使用する人々から大変感謝されている。そのことを目の当たりにすることができた。この点については,我が国派遣自衛隊部隊の活動に関してヒルデ・ジョンソン代表からも心からの謝意の表明があった。また,派遣されている自衛官諸官の士気,能力も極めて高いものがあり,日本政府の代表者として大変に心強く感じた。自衛隊派遣部隊の今後の活動は益々活発になっていくものと希望し,かつ確信した。
・ご案内のように,現在,第1次隊から第2次隊への要員の交代が行われている最中である。この部隊交代が終了すると完全に1個施設中隊,最大で330名規模となると承知しているが,これがジュバに展開することとなり,フルスケールで施設作業を行うことが可能となる。
・南スーダン政府要人との会談では,二国間関係あるいは地域情勢等についても意見交換を行った。いずれの会談においても,先方政府要人からは我が国のこれまでの支援への心からの謝意の表明,また更なる今後の支援についての期待の大きさが表明されたところである。
・冒頭で述べたように,南スーダン訪問の前後に,ケニア及びエチオピアを訪問し,それぞれの政府要人との会談も実施した。南スーダン情勢あるいはソマリア問題における我が国の貢献に謝意が述べられた。また,これら事項に対する周辺各国の我が国の期待の大きさを実感するとともに,我が国としては今後ともかかる周辺国を含むアフリカ更には国際社会と緊密に協調して様々な活動を推進していくという基本的な考え方を説明したところである。
(2)次期PKO予算
・先般開催された第5委員会(6月12日)にて,今年7月から来年6月までのPKO予算の総額が,約73億2千万ドル,前期比で約6.6%の減で決定された。今後行われる総会で承認され,正式に決定される予定である。
・今年の特徴としては,(a)これまで増加傾向にあったPKO予算が,2期連続で減額となった。(b)昨年争点となったPKO要員の経費問題(昨年は1年85百万ドルで妥結)については,「償還レートの見直しに関する上級諮問グループ(SAG)」の報告書を来年3月に議論することを前提にして,それまでの9か月間分として60百万ドルを支払うことで合意された。一種の臨時の増額である。(c)委員会の審議を通じて,事務総長の本来の要求水準から約84百万ドル(ACABQ勧告水準から約70百万ドル)の削減が実現した。
・このように,2年連続で減額が実現した背景には,国連の南スーダン共和国ミッション(UNMISS)など新しいミッションはあるが,基本的にはPKOの活動自体が一時的であるかもしれないが安定期に入っているということが挙げられると思われる。実際に,ダルフール国連AU合同ミッション(UNAMID)や国連コンゴ(民)安定化ミッション(MONUSCO)など大規模ミッションでは,要員乃至は経費の削減を通じて前期比で10%前後の削減を達成しているからである。
・また,現在話題になっている国連のシリア監視団(UNSMIS)については,立ち上がったばかりということと,予算の規模が小さいということのために,今回のPKO予算には含まれていない。これは,追加予算で対応することが予定されている。
(3)大陸棚限界委員の委員選挙結果
・6日(水),大陸棚限界委員会(CLCS)委員の選挙が行われ,我が国からは,立候補していた現職の浦辺徹郎東京大学大学院教授(理学系研究科)が再選された。
我が国からは,CLCSの第1期選挙(1997年)から今回の第4期に至るまで,途切れることなく委員を輩出してきているところである。我が国は,海洋大国として,CLCSに優れた委員を輩出することによって,沿岸国による大陸棚の限界設定作業を促進し,我が国の海洋権益のみならず国連海洋法条約の目的である,世界の海洋秩序の発展に積極的に貢献することをこれまでも重視をしてきたところ。
・浦辺委員におかれては,海洋地質学・鉱床学の第一人者として,引き続き活躍されることを期待している。
(4)アフガニスタンに関する東京会合に際する事務総長の訪日
・7月8日,日本政府は,アフガニスタン政府との共催で,アフガニスタンの持続可能な発展に関する東京会合を開催する。世界から約70の国及び国際機関を招待し,国連からは潘事務総長の出席を予定している。今回の潘事務総長の出席は,平和と安定に向かうアフガニスタンへの支援に対する国連のコミットメントを改めて強く表明するものと考え,これを歓迎している。
・東京会合では,権限移譲が終了する2015年以降もアフガニスタンが持続的に発展する為の道筋をつけることを目標としている。アフガニスタン政府はガバナンス強化のための具体的方策を準備し,他方,国際社会はアフガニスタン政府の開発戦略に対する具体的な支援を表明するという形で,いわば相互コミットメントを達成すべく努力をしていく所存。
・ちなみに,先般,バチェレUN-Women事務局長から,東京会合において女性への配慮の重要性を指摘するインターナショナル・ヘラルドトリビューン紙(4月13日付)への寄稿文を紹介する書簡を自分(本使)宛に頂いた。これに対し,自分(本使)から,東京会合においては女性の権利が重要な要素として取り扱われ,その成果文書にも然るべく反映されるように調整していると回答した経緯がある。
(5)ミャンマーにおけるUNDO事業の正常化
・我が国は,東南アジアと南西アジアをつなぐ位置にあって地政学的に重要なミャンマーが,民主的で市場経済に立脚し,社会的に安定した国になることが,地域の安定と発展のために極めて重要であるとの基本方針で,これまで欧米諸国とは一線を画す形で,一貫して支援を続けてきた。
・UNDPの事業については,ご案内のとおり,1993年以降,いわゆる草の根対象に限定されてきたが,昨今のミャンマーにおける改革の進展を受け,来週25日から29日にジュネーブで開催されるUNDP執行理事会年次会合でUNDP事業の正常化が話し合われる予定である。日本としてもこの面につき,引き続き協力していく所存。
(6)リオ+20
・我が国は,リオ+20に際し,同会議のテーマである持続可能な開発の実現に向けて,(a)「環境未来都市」の世界への普及,(b)世界のグリーン経済移行への貢献,(c)強靱な社会作り(いわゆる防災協力)の三つの分野を柱としてイニシアティブを発表している。
・第一に,「環境未来都市」は,我が国が2010年以来進めている事業であり,主に環境,超高齢化対応につき,先駆的な取組にチャレンジをしている都市を選定し,世界に類のない成功事例をつくる,あるいはその普及を展開に向けた様々な取組を行っているものである。我が国の知見,経験を,途上国の都市開発関係者の本邦招聘あるいは日本における国際会議の開催を通じて,共有していきたいと考えている。
・第二に,世界のグリーン経済移行への貢献に関しては,政策対話の強化や専門家派遣等の「緑の協力隊」の編成により,我が国の知見,経験を共有し,途上国のグリーン成長戦略策定・実施を支援していくもの。環境・低炭素技術導入のための途上国支援として,我が国が有している優れた技術,再生可能エネルギー分野等の気候変動分野で支援を実施していきたいと考えている。
・第三に,強靱な社会作りに関しては,世界で防災の主流化が実現するよう,総合的な災害対策において,我が国の防災技術とノウハウを活用し,途上国に対し支援を実施する。この関連では,ご案内のように来る7月に「世界防災閣僚会議in東北」を開催するところである。
(7)人間の安全保障
・我が国は,「人間ひとりひとりの能力を開花させることによって,その国と社会を発展させることができるという」人間の安全保障の考え方を外交政策の柱と位置づけ,ODA大綱の理念,中長期計画にも取り込み,ミレニアム目標の達成,防災,平和構築等の地球規模の問題に率先して,これまでも取り組んで来た。
・国連においては,1999年に人間の安全保障基金が設立され,今日までに70ヶ国以上の国で,200以上のプロジェクトを,UNDP,UNICEF,UNFPA等の国連関係機関を通じて実施をしてきた。
・また国連においては,2005年の国連首脳会議成果文書,2010年の人間の安全保障に関する国連総会決議に基づいて,昨年2011年には非公式テーマ別討論,本年4月には国連事務総長報告(A/66/763),6月4日の同報告に関する総会公式討論等を通じて,人間の安全保障の概念の更なる明確化等について取り組んできたところである。このような取り組みを踏まえて,現在,我が国は,ヨルダン(人間の安全保障ネットワーク(HSN)の議長国)と共同ファシリテーターとして,然るべき決議案を提示し,この採択に向かって非公式協議を行っているところである。
・同決議案では,事務総長報告の勧告も踏まえて,(a)人間の安全保障のcommon understanding(共通理解)の合意,(b)人間の安全保障の国連の活動,加盟国の取り組みの更なる推進などを提案し,加盟国と協議を続けているところである。
・かかる決議案が採択されることを通じ,国連,加盟国が人間の安全保障に取り組むための共通の土台が確立し,国連での活動,加盟国の人間の安全保障への取り組みが一層促進されることが期待されているところである。
2.質疑応答
(問)南スーダン訪問の際に,要人から今後の支援への期待の表明があったとのことだが,具体的にはどのような期待だったか。その中には(南スーダンの首都の)ジュバ以外の場所での活動の展開ということもあったか。
(答)現在は第一次隊と第二次隊の入れ替わりの時期であり,本格的な活動は第二次隊が到着してからになる。従って第一次隊の主な任務は自分たちの宿営地,そしてUNMISS関係者と知り合い,関係を立ち上げることであった。その中で具体的な施設補佐活動も行ってきた。南スーダン政府関係者からは,それに対する高い評価があり,これから始まる本格的な活動に対しても高い期待があった。具体的なプロジェクトが出てきた訳ではないが,先ほど冒頭で述べたとおり,インフラというものが南スーダンには欠如している状況なので,インフラの整備等々にPKO部隊の活躍が期待されているというのが基本的な考えである。細々とした具体的な話があった訳ではない。他方,南スーダン政府との関係においては,南スーダンが独立する前から長期にわたってJICA(独立行政法人国際協力機構)が入っており,今ちょうど摘み取り期に入っているJICAのプロジェクト案件がいくつかあるので,そのようなJICAを通じての支援に対しても深甚なる謝意の表明があった。
(問)ケニア,エチオピアにも立ち寄られて政府要人の方とも話をされたとのことだが,その場では安保理改革については議論になったか。
(答)安保理改革の話はもちろんした。安保理改革に対する日本の考え方は累次ご説明しているのでこの場では繰り返さないが,日本の安保理改革の緊要性は,1つのグループあるいは1つの国の利益ではなくて,加盟国全体,国連全体の将来にとって非常に重要であるという点を改めて強調した。加えて,いかなる安保理改革がなされるにしても,アフリカ諸国の積極的な行動がなければ実現しないということで,改めてアフリカ諸国の活動を通して是非協力をお願いしたいと申し上げた。
(問)UNDP(国連開発計画)のミャンマー支援について。これまで地方自治体を通した人道支援が中心であった。今後は政府の直接支援が始まると思うが,具体的にどのような支援になっていくのか。
(答)大臣が訪問されたり,メコンでの会議の際に首脳レベルで会ったりしているが,バイの関係においては,これまでもいろいろな場で支持を表明してきている。やはりインフラやエネルギー,日本が従来から重視している農業,あるいはコミュニティーに対する支援というものを本格的に行っていくことになると思う。他方,当然のことであるが,これらの支援はミャンマーにおける継続的な政治的な和解や民主主義への努力などと相まってなされるものであるので,それを横に見ながら,日本の開発協力が民主化への努力を押してくことに貢献するということにも期待しているので,政治面での進捗がないのにむやみに開発協力をするという趣旨ではない。
(問)PKO予算について。二期連続前年度比で減額の決定がなされたが,大使の評価如何。
(答)正直なところ,当代表部の行財政部の館員はこの1年以上の期間に亘ってこのPKO予算について,第5委員会において大変な努力をしてきた。日本の代表部のみならず,全加盟国もずっと議論してきている重要な問題である。予算という切り口から議論をしているが,予算は具体的なPKO活動そのものの議論と関連している。従って,PKOが抱えている現在の主要なチャレンジ,課題が予算となって現れてくるものなので,PKOが今後も有意義な活動を現場で果たすためにはどのような手当が必要なのかということで種々議論が重ねられてきた。主として財政貢献国,そして部隊を出している貢献国が議論を重ね,その間の溝をなんとか埋める努力をしてきたということである。それなりの妥協が出来て,同時にSAGも報告書を作ったので,来年はまた胸突き八丁,大変な交渉になると思う。但し,大変に重要なことであるので,予算を通じてPKOのあり方についての議論がなされ,加盟国の中で理解が深まる方向で話が進んでいくのであれば,日本としても更なる努力を惜しまないつもりである。
(問)
(1)PKO予算の減額決定を受けて,どこかにしわ寄せ(影響)が出てくるのか。
(2)UNDPのミャンマー支援については,29日の最終日に決議が採択されるのか。また,それを受けて支援国会議などが開かれる可能性はあるのか。
(3)南スーダンのPKOについて,同じような工兵部隊が中国や韓国からも入ってくると聞くが,どのように仕事を仕分けるのか。
(答)
(1)PKO予算については,今回減額が出来た大きな理由は,これまでの大きく,しかしかなり長い時間が経過してきているPKO,例えばコンゴ民のMONUSCOやUNAMIDのような,大きな部隊がこれまで前例に従って使ってきた予算を切り込み,1割カットしたということである。その1割の予算をカットしても今の状況においては,これらの大型ミッションの活動に直ちに影響は出てこないという理解であるので,今回の10%の減額が直ちにどこかにしわ寄せがくるとは考えていない。他方,UNSMISのように,今後,シリア情勢の如何によっては,どうなるかわからないというものもあるので,このあたりを今後注意して見ていく必要がある。
(2)UNDPのミャンマー支援については,日本はこれまで一生懸命水面下でやってきたものである。それは基本的に冒頭で述べたようにミャンマーの開発,ミャンマーの政治的な安定というものが非常に大事であるという基本的な立場から,ASEANにおける,例えばインドネシア等,ASEAN諸国と協力をして進めてきたということである。もちろん,ご案内のように,アメリカ等の欧米諸国もこの1年にわたるミャンマーにおける大変な改革努力を認めることによって,今般,このような形でUNDPの執行理事会を通じて,認められるのではないかと,我々は楽観している。
(3)南スーダンについては,中国からも工兵部隊が来ている。ただ,活動場所が違うので,中国等他の施設部隊と会うということはなかった。韓国はまだ派遣を決定していないと承知をしており,今後どうなるかについては,第三国のことなので,この場で申し上げる立場にはないと思う。
(問)シリアに関して。30日にジュネーブで開かれるかもしれないコンタクト・グループの会合があり,7月6日にパリで会議をやりますけれども,これに対して日本政府として何かコミットすることがあるのか。
(答)シリアのコンタクト・グループ会合については,我々の理解は,アナン特使を中心として,具体的にはP5+周辺国というような陣立てで会議をやるという方向で検討が進んでいると承知している。従って,日本としては状況を見守っているという状況である。他方,フレンズ会合については,日本はメンバーなので,積極的に参加していくということは当然のことである。
(了)
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