17日夕刻、西田大使は当代表部において定例記者会見を行いました。なお、当地邦人プレスから10社10名が参加しました。
1.冒頭発言
(1)2013年の展望
ア 平和と安定への取り組み
(ア)軍縮・不拡散(武器貿易条約国連会議の開催)
●3月18日から28日に、国連にて武器貿易条約(ATT)策定のための国際会議が開催される。この会議は昨年7月に開催されたものの、結局、条約案の採択に至らなかった、ATTを再度交渉するために開催されるものである。我が国として重視している。
今回の会議では、昨年7月の会議の最終段階で提出された議長テキスト案をたたき台に交渉が開始されることになるが、条約を積極的に支持する国と慎重な立場の国の間の隔たりは依然として存在しているため、交渉の成否は予断を許さない。我が国は、実効的な条約が普遍的な支持を得て採択されるように、議長を務める豪州を支援しつつ、努力を継続していく考えである。
●北朝鮮によるミサイル発射は我が国にとって重要な問題であるが、一般論として安保理決議に基づく不拡散分野の決議の履行について、国連における(国際的な)更なる関心を集めることは、当代表部にとっても大きな任務であると理解している。その観点から、1月18日に、ジャパンソサエティーにおいて、制裁・軍縮不拡散に関するセミナーを開催する予定である。これは2011年5月以降に我が国が、ポーランド、トルコと共催し、国連事務局とも協力して行っているイニシアティブの一環であり、今回が4回目となる。今回の会合においては、北朝鮮による核・ミサイル開発問題も考慮した上で、国連加盟国関係者及び専門家との間において、いかにして制裁及び不拡散に関する安保理決議の履行を確保するかについての課題を議論する予定である。当地における、かかる我が国の地道な努力が、国際的な不拡散体制の強化に資することを強く期待している。
(イ)安保理改革
●先般の安倍総理と潘基文事務総長との電話会談において、安倍総理より安保理改革の重要性を提起され、事務総長の指導力と協力を要請した。かかる総理の問題意識も踏まえ、本年においては、政治レベルの関与を一層強めつつ、また、ニューヨークと東京との間で更に密なる連携を取り、安保理改革の実質的な交渉の開始及び進展に向け、精力的に取り組んで行く所存である。
イ 開発
(ア)ポストMDGs
●「ポスト2015年開発目標に関するハイレベルパネル」は、リベリア(1月末)、インドネシア(3月)で2会会合が開催され、5月にも報告書が事務総長に提出される予定である。9月にはMDGsに関する事務総長特別イベントも開催される予定であり、本年後半にはポスト2015年開発目標に関する加盟国の間の本格的な議論が開始されることとなる。我が国が主催しているコンタクトグループ(CG)は、これらの流れも念頭に2月に当地NYで開催予定すべく準備中である。CGでは、ポスト2015においても現行MDGsと同様に簡素且つ明確な目標を掲げべきこと、貧困削減を中心に据えるべきこと、成長・雇用分野に目を向けるべきこと、といった議論が活発になされてきている。これらの点をハイレベルパネルあるいは加盟国間の議論に積極的に提起していきたい。加えて、人間の安全保障、防災、環境といった日本らしさ・日本の強みが発揮できる分野についても積極的に議論に貢献していく考えである。
●リオ+20の成果として設置が決まった持続可能な開発目標(SDGs)を議論する作業部会(WG)の構成が決まった。間もなく議論が始まっていくことを考えている。日本も作業部会に参加して、SDGsがポスト2015年開発目標にきちんと統合される道筋をつけるように努力していきたい。
(イ)TICADV
●6月1~3日に横浜にてTICADⅤを開催予定である。TICADは、我が国が国連、UNDP、世銀、AUと共催で、1993年から取り組んできているアフリカ開発に関する会議である。平和の定着、人間中心の開発、経済成長を通じた貧困削減の3つの柱を中心に、更に南南協力、貿易・投資の促進、MDGs、食料安全保障などの主要課題も扱っている。
ウ 行財政問題
●昨年12月25日に国連予算の新たな分担率が決定された。我が国も積極的に交渉に参画し、その結果、現行算定方式の維持で合意が達成された。結果として特に中印伯といった、いわゆる新興国の分担率が増した点で意義があった。我が国の分担率は減少したが、引き続き第2位の財政貢献国として国連における様々な議論をリードし、国際社会に対して責任ある役割を引き続き果たしていく所存である。
●本年、3月には、昨年、結果として先送りとなった事務総長が力を入れている人事異動(モビリティ)促進施策が再び議論される見込みである。この事務総長のイニシアティブを原則支持する我が国として引き続ききちんとした議論になるべく、積極的に参画する考えである。
エ 人権
●人権の保護と促進は国連の活動の三本柱の一つであり、人権を重視する我が国として、これまでも国連の場で様々な取組みを行っている。当地では昨年の第三委でも北朝鮮、ミャンマー、あるいはボランティアといった問題で我が国は主導的な役割を果たした。本年においても、昨年の当地での人権理選挙の結果、我が国がジュネーブの人権理に復帰する年である。第三委での議論とジュネーブでの議論とは、お互いに密接に関連しているため、我が国としては、この2つ(第三委と人権理)における、それぞれの議論が、それぞれを連携した形でこれを活用し、世界における人権の保護・促進に貢献していく考えである。
●北朝鮮の人権状況に関しても、昨年末、国連総会において初めてコンセンサスにより北朝鮮人権状況決議が採択された。北朝鮮の人権状況は、引き続き劣悪である。本年3月の人権理に向けてジュネーブとも緊密に連携して対処する所存である。この観点から、去る14日にピレー国連人権高等弁務官が北朝鮮の人権状況を厳しく非難し、包括的な国際的調査を求める声明を発しており、その中においては、我が国の拉致問題解決の必要性についても言及されている。我々としてはこの声明に注目しており、かかる声明も念頭に置きながら今後の対応ぶりを検討していきたい。
●また、本年G8議長国である英国が、G8外相会合で「紛争下の性的暴力防止」を主要議題の一つとしたいとしているなど、ジェンダー問題が本年更に注目を集めることが予想される。国連の場においても様々な議論が行われ、まずは3月に婦人の地位委員会(CSW)が「女性・女児へのあらゆる暴力撤廃・防止」を議題として開催されるところ、我が国としても我が国の積極的な姿勢を示していく考えである。また、ジェンダー問題を牽引するUN Womenとも、昨年11月のバチェレ事務局長の訪日をも踏まえ、財政支援に加え、引き続き執行理理事国、あるいは執行理ビューローの中での活動も視野に、積極的に貢献していく所存である。
(2)東アジア情勢(国連における取り組み)
ア 北朝鮮ミサイル発射関連
●北朝鮮のミサイル発射に対する安保理での対応については、引き続き現在、安保理の中において、主要国による協議が続いている。現時点で、調整の結果、どのような具体的な対応になるかについて、確定的なことを申し上げることは困難である。我が国は、今回の北朝鮮による発射は、安保理決議に明白に違反するもの、安保理として断固とした措置を取ることが重要であると考えている。こうした我が国の考えが安保理の対応にきちんと反映されるように、引き続き関係国と緊密に連携していく。
●因みに、先般行われた日豪外相会談においても、今年から安保理非常任理事国となった豪州との間で、安保理の諸議題、とくに北朝鮮の核・ミサイル問題等についても連携を更に強め、両国の首都及びニューヨークにおいて協議の定例化を含め、緊密に協力していくことで一致した。実際、当地においても昨年末以降、大使レベルから担当レベルにいたるまで、豪州との関係は、これまでになく緊密になっていることを紹介する。
イ 大陸棚を巡る中韓との関係
●昨年12月、中国、韓国がそれぞれ東シナ海について行った大陸棚延長申請に関し、我が方から、中国については12月28日に、韓国については1月11日に、それぞれ国連事務局宛の口上書を発出し、我が国の立場を表明しつつ、大陸棚限界委員会に対してかかる申請を検討しないよう要請した。
●国連事務局によれば、今回の中国及び韓国の申請は、本年7月半ばから8月末まで当地で開催される大陸棚限界委員会の暫定議題に含まれる予定の由であるが、同委員会の手続規則では、境界画定の問題がある海域での申請は、関係国の同意がなければ検討できないことになっている。同委員会は、我が方の口上書を踏まえ、同規則に従い適切に対応するものと考えている。
(3)中東情勢
ア シリア情勢
●シリアについては、既に22ヶ月以上も暴力と弾圧が継続し、安保理も本来の役割を果たすことなく、情勢が一方的に深刻化していることを強く懸念している。年明けのアサド大統領の演説は、全ての原因を外国あるいはテロリズムに責任転嫁するばかりで、自らに都合のいい勢力を除き、反体制派との対話を拒否するなど、遺憾ながら、暴力の停止に資するものではなかった。
●このような中、1月14日、スイスの主導により、我が国を含む57か国は、安保理議長(パキスタン)に対し、シリアの事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう安保理に求める共同書簡を発出した。この書簡は、①安保理の権限によって事態をICCに付託すること、また、②シリア当局及び全ての当事者に対し国際人権法・国際人道法を尊重すべしとの明確なメッセージを安保理として発出することを求めている。我が国は、かかる書簡の発出が、シリア情勢に関して機能不全に陥っている安保理がその責任をしっかりと果たすよう呼びかけるという意味を持つとともに、深刻な犯罪の不処罰は許されないとの立場を改めて明確にし、将来の類似の犯罪を抑止する観点からも有意義であると考え、かかる書簡に賛同し、参画したところである。
●また、我が国は、シリアの深刻な人道情勢に対する国際社会の懸念を強く共有しており、この人道情勢に対応するための事務総長及びエイモス人道問題担当次長の努力を強く支持している。この関連で、事務総長のイニシアティブもあり、クウェート政府主催において今月30日にシリア人道情勢に関するハイレベルのプレッジング会合が開催される予定であり、日本としても積極的に参加する所存である。
2.質疑応答
(問)安保理改革に関し、政治レベルでの関与を強めていくとのことだが具体的な取組み如何。
(答)日本における新政権の発足に伴い行われた、安倍総理と事務総長との電話会談において総理から本件を提起したことが明確に示しているように、新政権下においても本件は政治的な課題である。本件に対する政治レベルの関与を強めることによって、停滞しがちな安保理改革の議論に息を吹き込むことが重要だという趣旨である。
(問)北朝鮮について。日豪外相会談において北朝鮮への対応につきオーストラリアとの関係を強化するとのことだが、協議の定例化とは本国で行うのか、それともニューヨークで行うのか。
(答)日本はこれまでにも多くの国と「国連協議」という枠組みの下協議を行ってきている。これは通常の場合には、それぞれの国で順番に開催しているが、今回の日豪外相会談では、北朝鮮のミサイル問題を視野に入れつつ、当地ニューヨークにて両代表部間の協力を今まで以上に定例化していき、更に活性化したいということである。日本と豪州は広い意味で同じ地域にあり、国連では違う地域グループに所属するが、協力してきている。これまでも共通の価値を有し、基本的には同様の政策をとってきた両国が、どちらが安保理の中にいるか否かを問わず、国連全般の活動について協力を進めていきたいということである。
(問)他に代表部間の定例的な会合を持っている国は如何。
(答)様々な国と行っているが、今回のように外相レベルで明示的に言及したのは、最近においては初めてではないかと思う。 |